スナックやキャバクラの開業では、もっとも重要となるのが 風俗営業(1号営業:接待飲食等営業)許可申請 です。
許可が下りていない状態で接待行為を行えば「無許可営業」となり、罰則・営業停止の対象となります。
ここでは、許可申請の流れと、実務で特に注意すべきポイントを行政書士の視点で分かりやすく整理します。
まず「接待行為」に該当するかを確認する
許可申請が必要かどうかを判断する上で最も重要なのが 接待行為の有無 です。
● 接待行為に該当する例
- お客様の隣に座って会話する
- お酌・喫煙補助など手厚いサービス
- 歌やダンス・指名への応対
- お客様を特別にもてなす行為全般
このような行為を行うキャバクラやスナックは、
風俗営業1号許可が必須 です。
「スナックだから届出だけでOK」という誤解が多く、実際に無許可営業での摘発事例もあります。
店舗選びの段階で「出店可能か」を確認する
風俗営業許可は どこでも取れるわけではありません。
物件契約の前に、必ず立地のチェックが必要です。
● 用途地域の確認
風俗営業が可能なエリアは法律で制限されています。
例:
- 住居系地域 → 原則不可
- 商業地域・特定商業地域 → 多くは可
- 近隣商業地域 → 地域によって可否が分かれる
● 保全対象施設との距離
学校・図書館・病院などから一定距離を確保する必要があります。
自治体ごとに距離規定が異なるため、事前調査が重要です。
ここを誤ると、契約後でも許可が下りない重大リスクがあります。
店舗の構造基準を満たす必要がある
風俗営業許可では、店舗の構造が基準に適合していることが不可欠です。
● 見通しを妨げる構造はNG
- 個室
- 高いパーテーション
- 仕切りによる視界遮断
は原則不可です。
※奥の席が見えない構造は不許可の可能性大。
● 照度(明るさ)の確保
店内の照度は 10ルクス以上 必須です。
暗い雰囲気にしたい店舗でも、この基準はクリアする必要があります。
また、調光スイッチがあると許可がおりません。
● 客室面積の計算
柱・設備・カウンターの占有部分は面積から除外します。
申請図面の計算ミスはよくある不受理原因です。
図面作成は専門性が高く、最大の要注意ポイント
許可申請では以下の図面を提出します。
- 平面図
- 照明・音響設備図
- 客室の求積図
- 出入口の位置図
- 付近見取図
- 建物配置図
特に 求積図(面積計算図) は、
少しの誤差や表記ゆれでも警察署から差し戻されることがあります。
また、
- 不動産会社が持つ図面をそのまま使う
- ネットの素材図面を流用する
などは不適切です。
測量が不正確で、申請や検査でトラブルの原因になります。
申請書類が多く、準備に時間がかかる
許可申請に必要な書類には、以下が含まれます。
● 主な必要書類
- 風俗営業許可申請書
- 申請者の住民票・身分証明書・誓約書
- 店舗の建物使用権原を示す書類(賃貸借契約書など)
- 管理者講習受講証
- 図面一式
- 防火対象物使用開始届や防火管理者選任届(必要に応じて)
- 料金表
これらを整えた上で、警察署に申請します。
許可が下りるまで約1〜2か月
提出後、
- 現地調査
- 資料の追加提出
- 実態確認
等が行われ、許可までに 1〜2か月程度 かかります。
オープン日を決める場合は、逆算してスケジュールを組む必要があります。
特に繁忙期(年度末など)は審査期間が延びることがあります。
「深夜営業」と組み合わせるケースに注意
風俗営業許可は原則として 深夜(0時以降)営業が不可 です。
しかし実務では、
- キャストの接待行為は0時まで
- 0時以降は「深夜酒類提供飲食店営業」として延長営業
という形をとる店舗もあります。
ただしこれは非常に複雑で、
- 接待行為の完全禁止
- 店舗照度管理
- 営業形態を明確に区分
など厳しい運用が求められます。
誤ると 無許可営業・深夜違反 のリスクが高まります。
許可取得後にも守るべきルールがある
許可が下りた後も、風営法による遵守事項があります。
● 主な遵守事項
- 営業時間(地域により異なる)
- 管理者の設置
- 店舗構造を勝手に変更しない
- 料金の明確化
- 未成年者の接待禁止
- 定期的な管理者講習の受講
構造を少し変えただけで違反となるケースもあるため注意が必要です。
行政書士に依頼するメリット
風俗営業許可は、行政書士業務の中でも高度な専門分野です。
依頼することで、
- 図面作成のミスを防げる
- 出店可能な物件か事前判断できる
- 許可までの期間を短縮できる
- 警察署との調整も任せられる
などのメリットがあります。
特に 初めて開業する方は、物件契約前の相談を強く推奨 します。
まとめ
スナックやキャバクラの開業では、
風俗営業1号許可の申請がもっとも重要です。
物件選び・構造基準・図面・書類・審査期間など、注意すべきポイントが多く、
少しのミスでも不許可や遅延につながります。
これから開業を検討される方は、
トラブルを避けるためにも 行政書士への事前相談 をおすすめします。
特に図面作成と立地調査は、専門性が高く最も失敗が多いポイントです。




