
近年、子どものいない夫婦、いわゆる「おふたりさま」が増加しています。おふたりさまの場合、相続についてしっかりと準備しておかないと、意図しない形で財産が分配されてしまう可能性があります。本記事では、おふたりさまの相続の基本的な仕組みと、適切な対策について解説します。
おふたりさまの相続の基本
日本の民法では、法定相続人として配偶者が最優先されます。ただし、子どもがいない場合、亡くなった方(被相続人)の親や兄弟姉妹が相続人となることがあります。
- 親が存命の場合:配偶者と親が相続人となり、配偶者が3分の2、親が3分の1を相続します。
- 親がいない場合:配偶者と兄弟姉妹が相続人となり、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。
- 兄弟姉妹もいない場合:配偶者が全財産を相続します。
このように、おふたりさまの相続では、兄弟姉妹が相続人となるケースが多く見られます。
想定される相続トラブル
おふたりさまの場合、特に以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
- 夫婦のどちらかが亡くなった後、兄弟姉妹との共有相続になる
- 例えば、夫が亡くなった場合、妻が自宅に住み続けたいと考えても、夫の兄弟姉妹が相続分の主張をすると、売却を迫られる可能性があります。
- 遺産の分配を巡るトラブル
- 兄弟姉妹との関係が良好でない場合、遺産分割協議が難航することがあります。
おふたりさまが取るべき相続対策
トラブルを回避するために、おふたりさまが検討すべき相続対策を紹介します。
遺言書の作成
遺言書を作成することで、財産を配偶者に多く残すことが可能になります。特に、公正証書遺言にしておくことで、遺言の有効性を確保し、スムーズな相続手続きを実現できます。
夫婦間の生前贈与
生前に財産を贈与することで、相続時のトラブルを回避できます。例えば、配偶者控除(最高2,000万円まで非課税)を活用し、自宅などを生前に贈与するのも一つの方法です。
家族信託の活用
家族信託を利用すれば、財産の管理を柔軟に行えます。例えば、夫が認知症になった場合でも、妻が財産を適切に管理できるようにすることが可能です。
生命保険の活用
生命保険の受取人を配偶者に指定すれば、相続財産に含まれず、スムーズに資金を受け取ることができます。これは、遺産分割協議を避ける有効な方法です。
信頼できる専門家に相談する
行政書士や司法書士、税理士などの専門家に相談することで、最適な相続対策を立てることができます。相続の手続きは複雑なため、早めの準備が重要です。
まとめ
おふたりさまの相続問題は、適切な対策を取らなければ、予期せぬトラブルに発展する可能性があります。特に、遺言書の作成や生前贈与などの対策を講じることで、大切な配偶者が安心して暮らせるようになります。