「トラブルが起きてから相談する」のではなく、「トラブルを未然に防ぐ」。
これが予防法務という考え方です。近年、企業経営や相続・契約の分野において、この予防法務の重要性がますます高まっています。
本記事では、予防法務の基本的な考え方と、その中で行政書士がどのような役割を担っているのかについて解説します。
予防法務とは何か?
予防法務とは、将来起こり得る法律トラブルを事前に予測し、それを防ぐための法的サポートを行うことを指します。
一般的に「法務」というと、訴訟や紛争対応といった「問題が起きた後」の対応をイメージされがちです。しかし、実際には多くのトラブルは、事前の準備やルール作りによって防ぐことが可能です。
例えば、
- 契約内容が曖昧だったために起こる紛争
- 相続の準備不足による家族間トラブル
- 社内ルールが整備されていないことによる労務問題
これらは、適切な書類作成や制度設計を行っていれば回避できるケースが少なくありません。
「事後対応」と「予防法務」の違い
事後対応型の法務は、トラブルが発生してから対応するため、時間・費用・精神的負担が大きくなりがちです。
一方、予防法務は、
- トラブル発生のリスクを下げる
- 問題が起きても冷静に対応できる状態を作る
- 不要な紛争コストを抑える
といったメリットがあります。
特に中小企業や個人事業主、一般家庭にとっては、「揉めない仕組みづくり」こそが最大の防御策と言えるでしょう。
行政書士が予防法務で果たす役割
行政書士は、「書類作成の専門家」として、予防法務の分野で重要な役割を担っています。
1.契約書作成・チェックによるトラブル予防
契約トラブルの多くは、「口約束」や「内容が不十分な契約書」が原因です。
行政書士は、業務委託契約書、売買契約書、金銭消費貸借契約書などを通じて、当事者双方の権利義務を明確化します。
これにより、
- 言った・言わないの争いを防ぐ
- 万が一の際の対応方針を明確にする
といった効果が期待できます。
2.相続・遺言分野における予防法務
相続は、家族間の感情が絡むため、特にトラブルが起こりやすい分野です。
行政書士は、
- 遺言書の作成支援
- 相続関係説明図の作成
- 遺産分割協議書の作成
などを通じて、「争続」を防ぐためのサポートを行います。
「まだ元気だから大丈夫」と思っていても、準備がないまま相続が発生すると、家族関係に大きな亀裂が入ることも少なくありません。
3.事業運営におけるルール整備
企業や個人事業主にとって、社内ルールや事業運営のルールが曖昧な状態は、大きなリスクとなります。
行政書士は、
- 就業規則や社内規程の整備
- 取引条件や業務フローの文書化
- 許認可要件を踏まえた運営アドバイス
などを通じて、「問題が起きにくい事業体制」づくりを支援します。
弁護士との違いは?
予防法務というと「弁護士の仕事では?」と思われる方もいるかもしれません。
確かに、紛争解決や訴訟対応は弁護士の専門分野です。
一方、行政書士は、
- 紛争になる前の段階
- 日常的・継続的な法的サポート
- 書類を通じたリスクコントロール
を得意としています。
「トラブルが起きない状態をつくる」という点において、行政書士は予防法務の身近な相談相手と言えるでしょう。
予防法務は「コスト」ではなく「投資」
予防法務に対して、「費用がかかる」と感じる方も少なくありません。
しかし、トラブルが起きてから支払うコストと比べれば、予防にかかる費用は圧倒的に小さいケースがほとんどです。
また、安心して事業や生活を送れること自体が、大きな価値と言えます。
まとめ
予防法務とは、トラブルを未然に防ぎ、安心できる環境を整えるための法的サポートです。
行政書士は、契約書作成や相続対策、事業ルールの整備を通じて、予防法務の最前線を支えています。
「何か起きてから」ではなく、「何も起きないために」。
それが、これからの時代に求められる法務のかたちです。





