「行政書士法の一部を改正する法律」の成立について

令和7年6月6日、第217回国会に提出されていた「行政書士法の一部を改正する法律案」が、衆議院と参議院の本会議で相次いで可決・成立しました。令和8年(2026年)1月1日 から施行されます。

今回の改正は、デジタル社会の進展など、行政書士制度を取り巻く社会環境の変化を踏まえ、国民の利便の更なる向上等を図ることを目的に、5つの内容で構成されています。


改正内容

一、行政書士の使命
  現行の目的規定を改め、行政書士の使命を明らかにする規定を設ける。
二、職責
  行政書士の職責を明らかにする規定を創設し、デジタル社会の進展を踏まえた対応等を職責として規定する。
三、特定行政書士の業務範囲の拡大
  特定行政書士の業務範囲を拡大し、特定行政書士は、行政書士が「作成することができる」官公署に提出する書類に係る許認可等に関する不服申立ての手続について代理等をすることができることとする。
四、業務の制限規定の趣旨の明確化
  行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限規定に、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」との文言を加え、趣旨の明確化を図る。
五、両罰規定の整備
  行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限違反等に対する罰則及び行政書士法人による義務違反に対する罰則について、両罰規定を整備する。
六、施行期日
  この法律は、令和八年一月一日から施行する。

1. 行政書士の「使命」を明文化

行政書士法第1条が「~目的」から「~使命」に書き換えられました。行政手続の円滑化・国民の利便・権利利益の実現が、弁護士や司法書士など他の士業と同様に法的に“使命”と位置づけられました。

2. 「職責」の明確化とデジタル対応

新設された第1条の2では、

  • 常に 品位 を保ち、公正・誠実な業務を遂行
  • デジタル社会 を見据え、ICT活用や業務改善に努める

という職責義務が課され、行政書士の社会的信頼と未来展望が制度化されました。

3. 特定行政書士の業務範囲を拡大

従来は「行政書士が作成した書類のみ」扱えた不服申立て代理を、「作成できる書類」にまで拡大されました。本人作成の書類に基づく不服申立ても代理可能になります。

4. 無資格者による業務制限を明確化

第19条に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言が追加されました。これは、無資格者が「無料」などの名目で業務を実施するグレーゾーンを排除し、行政書士による独占業務の意義を強化する措置となります。

5. 両罰規定の整備

違反行為(無資格業務・名前使用制限など)を行った者だけでなく、その法人や関係者にも罰則が及ぶ「両罰規定」が整備されました。


制度改正の背景と意義

社会のデジタル化

オンライン申請やマイナポータルの普及など、行政手続きのIT化が加速しています。制度もこれに合わせて、ICT活用を職責とすることで行政書士の役割が強化されました。

専門性と信頼の強化

「使命」「職責」明文化により、行政書士の専門性・倫理が法的にも担保され、国民への信頼性が高まります。また、無資格業者対策や両罰規定で制度の健全性が守られます。

国民保護とワンストップ性

特定行政書士の権限拡大により、行政不服申立て代理や書類作成を一貫して担え、国民・企業の権利保護がより迅速かつ確実になります。

コンプライアンス徹底

両罰規定により、法人や関係者も処罰対象に。内部体制や教育、倫理研修の充実が求められます。


まとめ

今回の行政書士法改正は、制度の根幹に「使命」「職責」「情報化」「専門性」「信頼」を据え、現代社会に即した制度へとリニューアルするものです。

  • 国民保護と信頼の両立
  • デジタル対応の義務化で効率と品質の向上
  • 特定行政書士の権限拡大によるワンストップ支援
  • 無資格業なき公平な競争環境の整備
  • コンプライアンス強化と責任明確化

行政書士は行政手続を支えるプロフェッショナルとして、デジタル化・専門強化・倫理遵守に向けて、しっかりと準備を進めることが求められることとなります。