【2026年1月法改正】特定行政書士とは?  不服申立て代理の範囲拡大

行政書士は、許認可申請や契約書・遺産分割協議書の作成など、官公署に提出する書類や法律文書の専門家ですが、
その中でも「特定行政書士」は、より高度な行政争訟手続きに対応できる上位資格として位置づけられています。

2026年1月の行政書士法改正では、特定行政書士の業務範囲が拡大し、従来よりも幅広い不服申立て代理が可能になりました。
この記事では、改正内容を踏まえて、行政書士と特定行政書士の違いをわかりやすく解説します。


行政書士とは?基本の業務範囲

まず、行政書士の基本的な業務から整理します。

行政書士は、行政書士法に基づく国家資格であり、
官公庁に提出する書類作成、権利義務・事実証明に関する書類の作成、相談業務を中心とした専門職です。

行政書士が行う代表的な業務

  • 許認可申請(建設業、飲食店、風俗営業、産廃、在留資格など)
  • 契約書・内容証明郵便の作成
  • 相続手続き、遺産分割協議書の作成
  • 会社設立、法人関連手続き
  • 車庫証明や自動車登録
  • 行政手続きに関する相談・書類作成全般

行政の手続きをサポートし、事業者や個人の生活をスムーズにする役割を担っています。

ただし、行政書士には 「行政不服申立ての代理権」 がありません。
審査請求などの書類作成はできますが、代理人として役所とやりとりしたり、意見陳述をしたりすることは原則不可能です。

ここに特定行政書士との大きな違いがあります。


特定行政書士とは?

特定行政書士とは、行政書士の中でも、研修・考査に合格し、登録を行った者が名乗ることができる資格です。

特定行政書士になるための要件

  1. 特定行政書士研修(約90時間)を受講
  2. 研修修了後の考査試験に合格
  3. 日本行政書士会連合会での登録

この研修では、「行政不服申立て制度」「行政法の基礎」「審査請求の実務」など、行政争訟に必要な専門知識を深く学びます。

つまり、「行政書士の業務範囲に行政争訟の一部が追加される」イメージです。


2026年行政書士法改正:特定行政書士の業務が拡大

ここからが今回の改正の核心です。

■ 改正前の問題点

これまで、特定行政書士が不服申立ての代理をするには
「その行政書士自身が作成した書類に基づく処分であること」
が事実上の前提となる運用が多く、実務上大きな制限となっていました。

例:

  • 他の行政書士が作成した建設業許可申請 → 不許可
  • 不許可に不服申立てをしたいが、申請書を作成した行政書士でないと代理できない と解釈されるケースがあった

これにより、依頼者の利益にとって「もっと適切な行政書士」が代理できない場面も生じていました。

■ 改正後のポイント

2026年の行政書士法改正により、
「行政書士が作成することができる書類に関する不服申立て」であれば代理が可能
という明確な規定に整理されました。

つまり、

  • 特定行政書士であれば
  • 行政書士の業務範囲内の処分について
    申請書を作成した本人でなくても、不服申立て代理ができる
    という形に業務が拡大されたのです。

■ 実際にどう変わる?

  • 初回申請は別の行政書士が担当
  • 不服申立ては、その分野に特化した特定行政書士が担当
    という分業が可能になります。

依頼者にとっては、より専門性の高い行政書士に依頼できるメリットが生まれ、
特定行政書士にとっては業務領域が大きく拡大することになります。


行政書士と特定行政書士の違い(改正後版)

ここで改正後の違いを一覧で整理します。

業務内容行政書士特定行政書士
官公署提出書類の作成
契約書・遺産分割協議書の作成
相談・アドバイス
行政不服申立ての書類作成
行政不服申立ての代理(審査請求・再調査)×○(改正により拡大)
行政庁への意見陳述・主張整理×
他の行政書士が作成した申請に対する処分への代理対応×○(改正により可能)

特に下段の項目が今回の改正の肝です。


特定行政書士に依頼すべきケース

今回の改正により、特定行政書士の活躍の場は確実に広がります。
次のようなケースでは、特定行政書士への相談が有効です。

● 許認可が不許可になった

例:建設業許可、在留資格、風俗営業許可、産廃許可など
不許可理由の精査や審査請求に強い特定行政書士が対応できます。

● 行政処分(営業停止や取消など)に不満がある

処分取り消しを求める審査請求は専門性が高く、代理ができる特定行政書士に依頼すべきです。

● 初回申請を他の事務所が行っている

今回の改正で、申請書を作成した行政書士でなくても代理が可能に。
不服申立て経験が豊富な特定行政書士に乗り換えることもできます。


今回の法改正の意義

今回の改正は単なる業務拡大ではなく、次のような社会的な意義があります。

● 依頼者保護の強化

より適切な専門家が不服申立てを担当できるため、依頼者の利益が守られやすくなります。

● 行政手続の質向上

専門知識を持つ特定行政書士が関与することで、処分の適正さや透明性が高まります。

● 行政書士制度の強化

行政書士の中で、より高度な行政争訟に対応できる専門職が明確に位置づけられ、
制度としての信頼性が高まります。


まとめ:改正で特定行政書士の存在意義が高まる

行政書士は行政手続きの専門家ですが、
特定行政書士はその中でも 不服申立て手続の代理ができる唯一の行政書士 です。

2026年の改正により、

  • 申請書の作成者に限定されない
  • より柔軟で依頼者に寄り添った代理業務が可能
    という大きな進歩がありました。

行政手続きで不許可や処分に悩んだとき、
専門性をもつ特定行政書士に相談することで、より適切な解決策にたどり着ける可能性が広がります。