契約書や委任状には実印が必要?それとも認印で足りる?

「この契約書、認印でいいの?」「委任状には実印を押さなきゃだめ?」——契約書や委任状を作成する場面で、印鑑の種類に悩んだことはありませんか?この記事では、契約書や委任状に実印が必要なケース、認印で済む場合などを分かりやすく解説します。

実印と認印の違いとは?

まずは「実印」と「認印」の基本的な違いを押さえておきましょう。

  • 実印:市区町村役場に印鑑登録してある印鑑。印鑑登録証明書を添付して使用することが多い。法的効力が強く、財産や重要な権利義務に関わる契約で使われる。
  • 認印:印鑑登録をしていない、いわゆる「普通のはんこ」。日常的な受領印や簡単な書面で使われる。

また、「銀行印」や「シャチハタ印」もありますが、契約実務では主に実印と認印の区別が重要になります。

契約書は認印で足りるのか?

契約書に実印を使うべきか、それとも認印でよいのかは、契約の内容や相手との関係、証拠性の必要度によって異なります。

認印でも契約は成立する

民法上、契約は「当事者間の合意」によって成立します。つまり、書面がなくても契約は成立しますし、印鑑が押されていなくても法律上の契約は有効です。

したがって、契約書に認印を押すだけでも原則として契約書の効力はあります。特に、日常的な取引や、金額が小さいもの、口頭でも十分通用するような契約であれば、認印で問題になることは少ないでしょう。

しかし実印の使用が望ましいケースも

以下のようなケースでは、実印の使用を推奨します。

  • 高額な金銭の貸し借り契約
  • 不動産売買契約
  • 事業譲渡契約
  • 相続に関する協議書や遺産分割協議書
  • 株式譲渡契約
  • 債務保証契約(保証人になる場合)

これらは、後に「契約した・していない」「押印は本人のものかどうか」が争われる可能性がある契約です。実印と印鑑証明書を添付することで、「確かに本人が同意した」ことを強く証明できます。

委任状の場合はどうか?

認印で足りることが多い

委任状についても、法律上は認印でも効力が認められます。行政手続きや銀行手続きでも、認印で受け付けられることが多く、本人確認資料と併用されることで、問題なく処理される場合がほとんどです。

ただし実印が必要な場合もある

ただし、以下のような場合は実印と印鑑証明書が求められます

  • 登記申請に関する委任状(司法書士への委任など)
  • 自動車の名義変更(行政書士による手続き等)
  • 相続に関する手続き(遺産分割協議書への署名と押印、委任状など)
  • 金融機関での財産処分や借入など

つまり、本人の強い意思確認が求められる場面では実印が必要になるということです。とくに役所や法務局、金融機関が関与する手続きでは、実印でなければ受け付けてもらえないことが多いので注意が必要です。

シャチハタ印はNG?

「シャチハタ(スタンプ式の印鑑)」はどうでしょうか。実は、正式な契約書や委任状にシャチハタを使用するのは避けるべきです。

シャチハタは朱肉を使わずに押せる便利な印鑑ですが、次のような理由で信頼性が低く扱われます。

  • 同じ印影が複数作られる可能性がある
  • 時間が経つと印影が薄くなることがある
  • 登録できない(実印や銀行印として使用できない)

そのため、実務上はシャチハタは「押印にあたらない」と判断されることが多く、正式文書には不適切とされます。

印鑑が押されていない契約書は無効?

「契約書に印鑑がない=契約が無効」という誤解もよくありますが、これは正確ではありません。

繰り返しになりますが、契約の成立には「合意」があればよく、書面や印鑑は必須ではないのです。ただし、裁判になったときに「本当に契約があったか?」という証明が難しくなるので、書面と押印が重要な証拠になるのです。

その意味で、重要な契約では実印+印鑑証明書、そこまでではない契約では認印という使い分けが現実的です。

まとめ:実印が必要かどうかは「契約の重要度」で判断を

契約書や委任状に実印が必要か認印でよいかは、契約の重要度や証拠性の要不要によって変わります。

書類の種類認印でOK実印が望ましい・必要
賃貸借契約書(個人)高額物件なら実印推奨
売買契約書(個人間)不動産・車など高額は実印
委任状(簡易な手続き)登記・相続などは実印
遺産分割協議書×実印+印鑑証明書が必要
株式譲渡契約実印が推奨される
保証契約書×実印+証明書が確実

「念のため実印を押しておこう」という考えもリスク回避には有効ですが、手続きやコストとのバランスも大切です。不安な場合は、行政書士など専門家に確認してから進めると安心です。

契約書や委任状の押印でお困りの場合は、お気軽に当事務所までご相談ください。契約の重要度や相手方との関係性などを考慮し、適切なアドバイスをさせていただきます。