アパートやマンションの賃貸借契約をする上での注意点について

進学や就職、転勤などで新たにアパートを借りる方は多いですが、賃貸借契約には見落としがちな落とし穴もあります。特に初めて契約をする方にとっては、不動産業者や貸主とのやり取りに不安を感じることもあるでしょう。

本記事では、アパートやマンションの賃貸借契約を結ぶ際に、事前に押さえておくべき注意点を解説します。トラブルを避けるためにも、ぜひ参考にしてください。


契約形態の確認

アパートやマンションを借りる際の契約には、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。

● 普通借家契約

更新が原則可能で、借主の居住を安定的に保障するタイプの契約です。正当な理由がない限り、貸主から一方的に契約を終了することはできません。

● 定期借家契約

期間満了で確実に契約が終了する契約です。更新がないため、例えば「2年契約」であれば2年後には退去が前提となります。再契約を希望する場合は、貸主の合意が必要です。

注意点:定期借家契約の場合、その内容が書面で明示されていないと無効となる場合があります。必ず契約書の記載を確認しましょう。


契約書のチェックポイント

契約時には「重要事項説明書」と「賃貸借契約書」が渡されます。次の点に注意して確認しましょう。

● 家賃・管理費・共益費

毎月の支払い額だけでなく、更新料や契約時の礼金・敷金などの初期費用も明記されていますか?
管理費や共益費は別途必要な場合も多いため、合計額を把握しておくことが重要です。

● 契約期間と更新の条件

契約期間や、自動更新の有無、更新料の金額も確認しましょう。

● 中途解約の条件

転勤や引っ越しなどにより早期解約する可能性がある方は、解約の条件(何日前までの通知が必要か、違約金が発生するか)を必ず確認してください。

● 原状回復の範囲

退去時のトラブルで多いのが、原状回復の範囲についてです。
「経年劣化」や「通常使用による汚れ」は借主の責任ではありませんが、それ以上の損傷(壁の穴、喫煙によるヤニ汚れなど)は請求されることがあります。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も参考にすることをおすすめします。


保証人・保証会社の選定

家賃の滞納や損害賠償の際に備えて、貸主は保証人や保証会社を求めることが一般的です。

● 連帯保証人

親や親族がなることが多いですが、責任が重いため安易に引き受けさせないよう注意が必要です。連帯保証人は借主と同じ責任を負うため、家賃滞納時には直接請求されます。

● 保証会社

最近では、保証会社を利用する契約が増えています。
保証料(初回契約時に家賃の30~100%程度)や年間更新料が発生することがありますので、金額と内容をよく確認しましょう。


入居前の現地確認

契約書にサインする前に、以下の点を現地でしっかり確認しましょう。

  • 壁や床に傷や汚れがないか
  • 設備(エアコン、給湯、キッチン、ドアの鍵など)が正常に動作するか
  • 周辺の騒音や治安、日当たりはどうか
  • ゴミ出しのルールや共用部分の管理状態

トラブル防止のため、入居前の状態を写真に残しておくこともおすすめです。


特約条項に注意

契約書の最後に記載されることが多い「特約条項」には、貸主独自の条件が記載されています。

例)

  • 退去時にハウスクリーニング費用を借主が全額負担
  • ペット禁止や楽器演奏の制限
  • 鍵交換費用を借主が負担する旨

これらは法的に有効な場合も多いため、内容をよく理解し、納得した上で署名・押印することが重要です。


更新・退去時の流れも事前に確認

更新時には更新料(通常は家賃の1か月分程度)が必要な場合があります。更新時期とその通知方法、退去の際の立ち合いや精算方法なども、契約前に聞いておくと安心です。


まとめ

アパートやマンションの賃貸借契約は、一見シンプルに見えても、細かな契約内容や特約によって大きな差が生じることがあります。トラブルを未然に防ぐには、「契約書をよく読む」「不明点は遠慮せず確認する」ことが何より重要です。

特に、契約書の内容を読み飛ばしてしまうと、退去時に思わぬ費用を請求されたり、早期解約でトラブルになるケースもあります。少しでも不安を感じた場合は、行政書士など専門家に相談することをおすすめします。


アパートやマンションの契約は、「生活のスタート地点」です。
安心して暮らせる住まいを見つけるためにも、納得した上での契約を心がけましょう。