トラックでの運送業(一般貨物自動車運送事業)を始めるためには

一般貨物自動車運送事業の許可申請に必要な手続き

物流業界は、EC市場の拡大や人手不足の影響を受け、今なお成長を続ける重要な産業です。その中でも「一般貨物自動車運送事業」は、トラックなどを使って荷主から依頼された荷物を有償で運ぶ事業であり、参入には国の許可が必要となります。本記事では、一般貨物自動車運送事業の許可申請について、必要な要件・手続き・費用などをわかりやすく解説します。


一般貨物自動車運送事業とは?

「一般貨物自動車運送事業」とは、他人の貨物をトラックなどで有償にて運送する事業を指し、道路運送法に基づいて国の許可が必要です。自社の製品や資材を自社で運ぶ「自家用運送」とは異なり、運賃をもらって他人の荷物を運ぶ場合は、必ずこの許可が必要です。


許可を取得するための主な要件

許可申請にあたっては、以下のような人的・物的・経営的な要件を満たす必要があります。

人的要件

  • 運行管理者の選任:運行管理者資格者証を持つ者を事業所ごとに1名以上配置。
  • 整備管理者の選任:一定規模以上の車両を保有する場合、整備管理者の配置が必要。
  • 法令試験の合格:申請者(法人の場合は常勤役員の1人)が、国の実施する法令試験に合格する必要があります。
  • 運転者の確保:最低車両数である5台を常時稼働させることができる運転者数として原則5名以上を確保。

物的要件

  • 営業所・休憩仮眠施設:事業用に使用する営業所を確保し、ドライバーのための休憩・仮眠施設も必要です(原則併設)。
  • 車庫(車両置場):営業所に隣接または一定距離内に確保。用途地域や道路幅などの要件を満たす必要があります。
  • 車両:原則として5台以上のトラックを保有(リース可)。貨物の運送に適した構造であることが求められます。

資金要件(財務的基盤)

  • 許可後、事業を安定的に運営するための資金(運転資金の6ヶ月から1年分)が必要です。
    目安としては、以下の経費の合計額を自己資金で保有していることが求められます。
    • 車両の購入費またはリース料(最低5台分)
    • 営業所・車庫の取得費や賃料
    • 人件費(6ヶ月分程度)
    • 保険料・燃料費などの運転資金

許可申請から営業開始までの流れ

事前相談及び要件調査

各運輸局で事前相談を行い、計画内容が要件を満たしているか確認します。

申請書類の作成・提出

必要書類は多岐にわたり、以下のような資料を提出します。

  • 許可申請書
  • 営業所・車庫の平面図・契約書
  • 車両の仕様書
  • 経営計画書
  • 資金計画書
  • 法令試験の合格証明書

法令試験の受験

申請者(法人の場合は常勤役員の1人)は法令試験(道路運送法、道路交通法、労働基準法など)を受験し、合格が必須です。

審査・現地調査

提出された書類をもとに、営業所や車庫などの現地調査が行われます。

許可取得・事業開始

審査を経て許可が下りると、「運行管理者・整備管理者選任届」の提出や車両の登録、運輸開始前の確認報告を行い、最終的に「運輸開始届」、「運賃料金設定届」等を提出し、運送業を開始できます。


許可取得にかかる期間と費用

■期間の目安

  • 書類準備〜提出:1〜2ヶ月
  • 審査〜許可まで:約3〜4ヶ月
    トータルで4〜6ヶ月程度かかると考えておくとよいでしょう。

■主な費用

項目金額(概算)
許可申請手数料120,000円
登録免許税・証明書取得費1万~2万円程度
車両・設備整備費数百万円~(内容による)
行政書士報酬(依頼時)30~60万円前後

許可取得後の注意点

許可を取得した後も、以下のような義務があります。

  • 毎年の事業報告書提出
  • 運行管理者・整備管理者の選任継続
  • 道路運送法や関係法令の遵守
  • 労務管理の徹底(長時間労働や過積載の防止)
  • 監査への対応(運輸局による巡回指導あり)

許可取得のためには専門家のサポートが有効

一般貨物自動車運送事業の許可申請は、必要な書類が多く、要件も細かく定められています。自力での申請も可能ですが、要件の不備により不許可となるリスクを考えると、行政書士などの専門家に相談することでスムーズに進めることができます。


【参考】貨物軽自動車運送事業について

貨物軽自動車運送事業とは、軽トラックや軽バンを使用し、他人の荷物を有償で運送する事業のことです。近年では「軽貨物ドライバー」や「黒ナンバーで開業」といった形で注目されています。

この事業は、許可制ではなく届出制であり、普通自動車を使う一般貨物自動車運送事業と比べて、初期費用や要件が大幅に軽いのが特徴です。

主な手続きは以下のとおりです:

  1. 運輸支局で「貨物軽自動車運送事業経営届出書」の提出
  2. 使用する軽自動車の車検証提出と黒ナンバーの交付
  3. 運送約款の作成・提出

開業までは最短1~2週間で可能で、個人事業としての副業や独立開業の第一歩として選ばれています。ただし、任意保険の加入や適切な運賃設定、貨物賠償責任保険への加入など、最低限の備えは必要です。


まとめ

  • 一般貨物自動車運送事業は「許可制」で、厳格な要件を満たす必要があります。
  • 営業所や車庫の確保、資金計画、法令試験の合格など、準備には時間と労力がかかります。
  • 一方、貨物軽自動車運送事業は「届出制」で、短期間・少額資金で開業可能です。

トラック運送業を始める第一歩として、ぜひご自身の状況に合った形態を選択し、確実に手続きを進めていきましょう。お困りの際は、専門の行政書士にご相談ください。