「相続放棄をすれば、もう一切関わらなくてよい」そう思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。特に、相続財産の中に空き家があり、他に相続人がいない場合には注意が必要です。
実際に、「相続放棄をしたのに空き家の管理責任を問われた」、「近隣トラブルや倒壊リスクで困っている」といった相談は少なくありません。
本記事では、「相続放棄後の空き家管理義務の有無」や「相続人がいない場合の法的な扱い」、「相続財産清算人を申し立てる必要があるケース」などについて、わかりやすく解説します。
相続放棄とは何か
相続放棄とは、家庭裁判所に申述し、最初から相続人でなかったものとみなされる制度です。
相続放棄をすると、
- プラスの財産(不動産・預貯金)
- マイナスの財産(借金・連帯保証)
のいずれも引き継がなくなります。
ただし、「相続放棄=完全に無関係」ではない点が、空き家問題では重要になります。
相続放棄後でも空き家の管理義務はあるの?
民法改正後の考え方
2023年の民法改正により、相続放棄後の管理義務は次のように整理されました。
相続放棄をした人でも、
相続財産を「現に占有」している場合には、
その財産を保存する義務がある
これを「保存義務」といいます。
「現に占有している」とは?
典型例は以下のようなケースです。
- 被相続人と同居していた
- 被相続人死亡後も空き家を管理・使用している
- 鍵を管理し、自由に出入りできる状態にある
このような場合、相続放棄をしても、
空き家が放置されて倒壊・火災・近隣被害が出ないよう、最低限の管理義務が残る可能性があります。
一方、
- 生前から別居しており
- 死後も一切関与していない
- 鍵も持っていない
といった場合は、「現に占有している」とは評価されにくくなります。
他に相続人がいない場合はどうなる?
相続人不存在の状態
全員が相続放棄をすると、その相続は「相続人不存在」となります。
この場合、相続財産(空き家を含む)は、最終的に国庫に帰属する可能性があります。
しかし、国がすぐに引き取って管理してくれるわけではありません。
空き家が宙に浮く危険性
相続人がいないまま、
- 老朽化した空き家
- 草木が伸び放題の土地
が放置されると、近隣住民への被害や行政指導の対象になることもあります。
そこで重要になるのが、相続財産清算人の制度です。
相続財産清算人とは?
相続財産清算人とは、
相続人がいない場合に、相続財産を管理・清算するため、家庭裁判所が選任する人です。
主な役割は、
- 空き家や土地の管理
- 債権者への弁済
- 財産の売却・処分
- 最終的な国庫帰属手続き
です。
相続財産清算人の申立てが必要なケース
次のような場合には、相続財産清算人の申立てを検討すべきです。
- 相続放棄をしたが、空き家を現に管理している
- 他に相続人が存在しない
- 空き家の老朽化や倒壊リスクがある
- 固定資産税や管理負担から解放されたい
相続財産清算人が選任されることで、
個人としての管理義務から離れることができる点が大きなメリットです。
申立てができる人と手続きの概要
申立てができる人
- 相続放棄をした元相続人
- 利害関係人(債権者・近隣住民など)
- 検察官
実務上は、相続放棄をした親族が申し立てるケースが多く見られます。
注意点(費用負担)
相続財産清算人の申立てでは、
- 予納金(数十万円程度が多い)を求められることがあります。
この費用は一時的に申立人が負担しますが、相続財産から回収できる場合もあります。
早めの専門家相談が重要
相続放棄と空き家問題は、
「放棄すれば終わり」と判断すると、後からトラブルになることがあります。
特に、
- 高崎市など地方都市
- 空き家率が高い地域
では、近隣トラブルに発展しやすい傾向があります。
弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に相談し、
- 相続放棄の可否
- 管理義務の有無
- 相続財産清算人の必要性
を早めに整理することが大切です。
まとめ
- 相続放棄をしても、空き家を現に占有している場合は管理義務が残る可能性がある
- 他に相続人がいない場合、空き家は宙に浮いた状態になる
- 相続財産清算人を申し立てることで、管理・処分を法的に整理できる
- 空き家問題は、放置せず早期対応が重要





