アパート経営は「不労所得」と呼ばれることもあり、安定収入を期待して始める方が少なくありません。しかし、特に地方でのアパート経営には都市部とは異なるリスクがあり、注意が必要です。さらに、相続や法人化といった法律・税務の問題も絡んでくるため、正しい知識と準備が求められます。
この記事では、地方におけるアパート経営の難しさを整理したうえで、相続や法人化の観点から専門的に解説します。
地方でアパート経営が難しい理由
1. 人口減少と高齢化
地方都市では若い世代が都市部へ流出し、人口が年々減少しています。入居需要の中心となる単身者や子育て世帯が減る一方で、高齢化が進んでおり、従来型の間取りや立地条件では借り手がつきにくくなっています。
2. 空室リスクと賃料の下落
人口減少や新築物件との競争により、空室率が高止まりする傾向にあります。空室が続けば、収益は安定せず、ローン返済や固定資産税、修繕費の負担が重くのしかかります。地方では賃料を下げて入居者を確保せざるを得ないケースも多いのです。
3. 出口戦略の難しさ
都市部であれば中古物件の流通市場が活発ですが、地方では買い手が限られているため、思うような価格で売却できない場合があります。将来、相続が発生した際に「誰も引き継ぎたがらない不動産」になるリスクがあるのです。
相続の場面で生じるアパート経営の難しさ
地方のアパート経営では、経営そのもののリスクに加えて、相続問題が大きな課題になります。
1. 相続人間のトラブル
アパートは現金のように分けられないため、相続人間で遺産分割協議がまとまらず、トラブルになるケースが多く見られます。特に、地方のアパートが空室だらけで収益性が低い場合、「引き継いでも負担ばかり」として相続を望まない相続人も出てきます。
2. 相続税・固定資産税の負担
アパートは土地と建物の評価額が高額になる場合があり、相続税の課税対象になることもあります。相続税を現金で納められない場合、やむを得ず物件を売却しなければならないこともあります。また、相続税がかからないケースでも、毎年の固定資産税や修繕費の負担が相続人に重くのしかかります。
3. 遺言書の必要性
相続での混乱を防ぐためには、遺言書の作成が非常に重要です。遺言でアパートを誰に承継させるかを明確にしておけば、相続人同士のトラブルを回避できます。
法人化という選択肢
地方でのアパート経営を続ける上で、法人化(会社設立)を検討するケースもあります。
法人化のメリット
- 節税効果
家族を役員にすることで、給与として分散し、所得税の負担を軽減できる場合があります。 - 相続対策
アパートを法人に移すことで、相続時に「会社の株式」として承継でき、遺産分割がしやすくなります。 - 経営の継続性
個人名義のアパートはオーナーが亡くなると相続手続きが必要ですが、法人所有であれば経営がそのまま継続できます。
法人化の注意点
ただし、法人化には設立費用や会計・税務申告のコストが発生します。さらに、地方で空室が多く利益が少ない場合は、法人化のメリットが十分に出ないこともあります。そのため、法人化は「規模」「収益」「相続人の意向」などを総合的に検討して決める必要があります。
専門家に相談するメリット
地方でのアパート経営は、経営判断と法的手続きの両面が絡むため、専門家のサポートを受けることが重要です。
- 行政書士は、遺言書の作成や相続手続き、法人設立手続きなどをサポートできます。
- 税理士は、相続税対策や法人化後の会計処理に関して助言します。
- 弁護士は、相続人間の紛争が発生した場合に法的対応を行います。
特に、地方でのアパート経営は出口戦略が難しいため、相続発生前から準備することが成功の鍵となります。
まとめ
地方でのアパート経営は、
- 人口減少による空室リスク
- 新築物件との競争
- 出口戦略の難しさ
といった経営面での課題に直面します。さらに、相続が発生した場合には、遺産分割や税負担といった法的問題も加わり、家族間のトラブルに発展することもあります。
そのため、地方でアパート経営を行う際には、
- 遺言書の作成
- 法人化の検討
- 専門家への相談
を早い段階で行い、将来を見据えた対策を講じることが不可欠です。
「地方でのアパート経営は都市部より難しい」と言われますが、正しい知識と準備を行えば、安定した資産運用として活かすこともできます。 アパート経営や相続でお悩みの方は、早めに専門家へご相談ください。





