遺言書と聞くと「自分にはまだ早い」「そんな大げさなことをしなくても大丈夫」と考える方も多いかもしれません。しかし、遺言書は家族にとって大切な「心の支え」となるだけでなく、財産の承継を円滑にするための重要な手段です。ここでは、遺言書が必要とされる理由や作成するメリットについて解説します。
遺言書の必要性が高いのは？
法定相続分で納得しにくい場合
法律では、財産は法定相続分に基づいて分割されますが、必ずしも家族全員がその分け方に納得できるわけではありません。例えば、介護に多くの時間や費用をかけた家族がいる場合、通常より多くの財産を受け取りたいと考えるのは自然なことです。このような場合に、遺言書で特定の相続人に対する配慮を示すことが可能です。
再婚家庭や特別な家族構成
再婚家庭では、前婚の子どもと現配偶者との間に利害が対立することがあります。遺言書がなければ、現配偶者と前婚の子どもが争うことになりかねません。また、特別な事情がある家族（例えば、障がいのある子どもや経済的に苦しい状況にある家族）がいる場合、その人を経済的に支援する内容を遺言書で定めることもできます。
事業承継や特定の財産の承継
家業や特定の事業を引き継いでもらいたい場合や、思い入れのある財産（自宅や土地など）を特定の相続人に残したい場合、遺言書が有効です。遺言書がないと、相続人全員で協議してその行方を決めなければならず、意見の違いから対立が生じる可能性もあります。
遺言書がもたらすメリット
遺言書には、円滑な相続を実現し、相続人同士のトラブルを未然に防ぐ役割があります。遺言書を作成することで得られるメリットは以下の通りです。
相続人間の争いを防ぐ
遺産相続においては、財産の分配をめぐるトラブルがしばしば発生します。遺言書があれば、被相続人の意思に基づく分配が行われるため、相続人同士の争いを減らすことができます。特に、明確な遺言があれば、相続人の間での合意形成がスムーズになり、手続きが迅速に進みます。
税務面でのメリットも
遺言書の内容を工夫することで、相続税対策になる場合もあります。例えば、相続税の基礎控除や特定の控除を利用しやすい形での分割を指定することで、相続税の負担を軽減できることがあります。ただし、税務に関するアドバイスは税理士などの専門家の協力が必要です。
被相続人の思いを伝える
遺言書は、単に財産の分配方法を示すだけでなく、残された家族に対する感謝の気持ちや愛情を表現する手段にもなります。言葉やメッセージとして家族に伝えたい思いがある場合、それを遺言書に含めることで、家族にとってはかけがえのない財産になることもあります。
遺言書を作成する際の注意点
遺言書の作成にはいくつかの注意点があります。
法的要件を満たすこと
遺言書は、法的に有効であるために一定の要件を満たす必要があります。『自筆証書遺言』や『公正証書遺言』など、遺言書の形式も異なり、作成の方法によって有効性が変わるため、行政書士や司法書士、弁護士など専門家に相談することが推奨されます。
定期的な見直し
家族構成の変化や財産状況の変化に応じて、遺言書の内容を見直すことも大切です。特に、大きな財産の変動や法改正があった場合には、遺言書が現状に合っているかを確認しましょう。
専門家のサポートを受ける
遺言書は一度作成すると、内容を変更することができますが、死後に発見された内容が法的に無効となることがないよう、専門家にチェックを依頼することが安心です。例えば、公正証書遺言は公証人の確認を受けるため、信頼性が高く、後のトラブルを防ぎやすい方法です。
まとめ
遺言書は「自分の意思を残す」だけでなく、「家族の争いを防ぐ」「相続手続きを円滑に進める」といった効果があります。作成することで、残された家族が安心して生活を続けられるように配慮することができます。もし遺言書の作成について迷っている場合は、行政書士など専門家に相談してみてはいかがでしょうか？遺言書が必要かどうか、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
