
事業承継において、先代経営者が後継者に自社株式や事業用資産を集中して承継させる際、他の相続人からの遺留分侵害額請求により、これらの資産が分散してしまうリスクがあります。この問題に対処するため、経営承継円滑化法では「遺留分に関する民法の特例」(以下「民法特例」)が設けられています。
除外合意とは
民法特例の一つである「除外合意」は、先代経営者から後継者への贈与等により取得した自社株式や事業用資産の価額を、遺留分算定の基礎財産から除外することを、推定相続人全員および後継者の合意により定めるものです。これにより、後継者は相続時に他の相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクを軽減し、円滑な事業承継が可能となります。
除外合意の適用要件
除外合意を適用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 対象企業の要件:
- 中小企業者であること。
- 合意時点で3年以上継続して事業を行っている非上場企業であること。
- 先代経営者の要件:
- 過去または合意時点において会社の代表者であること。
- 後継者の要件:
- 合意時点において会社の代表者であること。
- 先代経営者からの贈与等により株式を取得し、会社の議決権の過半数を保有していること。
- 合意の要件:
- 推定相続人全員および後継者の合意が成立していること。
- 合意内容が経営の承継の円滑化を目的としていること。
手続きの流れ
除外合意を有効にするためには、以下の手続きを踏む必要があります。
- 合意の成立:
- 推定相続人全員および後継者で合意書を作成します。
- 経済産業大臣の確認:
- 合意成立後1ヶ月以内に、後継者が経済産業大臣に対して確認申請を行います。
- 家庭裁判所の許可:
- 経済産業大臣の確認書を受領後1ヶ月以内に、後継者が家庭裁判所に許可の申立てを行います。
これらの手続きを経て、除外合意の効力が発生します。
注意点
- 合意の真意性: 合意は全員の真意に基づくものでなければなりません。
- 手続きの期限: 各手続きには期限が設けられており、期限内に申請・申立てを行う必要があります。
- 専門家への相談: 手続きは複雑であり、専門的な知識が求められるため、弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
経営承継円滑化法における除外合意は、事業承継時の遺留分に関する問題を解決し、後継者への円滑な資産承継を可能にする有効な手段です。適切な手続きを踏むことで、相続紛争のリスクを軽減し、事業の継続性を確保することができます。