終活でエンディングノートを上手く活用するには

人生の終盤を迎えるにあたり、「エンディングノート」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。エンディングノートとは、万が一のときや自分の死後に備えて、自分の希望や想い、家族へのメッセージ、財産情報などをまとめておくノートのことです。法律的な効力を持つ遺言書とは異なり、あくまで“気持ちを伝える”ためのツールですが、実はこのエンディングノート、うまく活用することで、残される家族への大きな助けとなり、自分自身の人生をより豊かにする効果もあります。今回は、そんなエンディングノートを「有効に活用する方法」について、行政書士の視点から解説します。


エンディングノートを書く意味

エンディングノートは「終活」の一環として注目されていますが、単なる“死の準備”ではありません。むしろ、「今をどう生きるか」を見つめ直すためのツールでもあります。

具体的には、以下のようなメリットがあります。

  • 自分の希望を明確にできる
    介護や延命治療の希望、葬儀やお墓のことなど、生前に決めておきたいことを整理できます。
  • 家族の負担を軽減できる
    死後に発生するさまざまな手続きや判断を、事前に記しておくことで、遺族の心理的・時間的負担を減らせます。
  • 気持ちを伝えられる
    普段なかなか言葉にできない「ありがとう」「ごめんね」といった感謝や謝罪の気持ちを伝えることもできます。

エンディングノートに書いておくべきこと

エンディングノートに書く内容は自由ですが、以下のような項目を参考にすると、より実用的なものになります。

■ 基本情報

氏名、生年月日、住所、マイナンバー、保険証番号、運転免許証などの情報。

■ 医療・介護についての希望

延命治療の有無、臓器提供の意思表示、認知症になった場合の希望など。

■ 財産情報

預貯金、株式、不動産、保険、借入金、貴重品の保管場所など。

※遺言書との違いを意識し、「財産の分け方」ではなく「財産の内容」を把握できるように記載します。

■ 葬儀・お墓についての希望

宗教・宗派、葬儀の規模、場所、喪主を誰にしてほしいか、お墓や納骨先の指定など。

■ 連絡してほしい人

親族、友人、関係者の連絡先リスト。

■ デジタル情報(デジタル遺品)

SNSやメール、ネット銀行などのアカウント情報、パスワード管理の方法。

■ メッセージ

家族や友人への感謝の言葉、想い出など。


エンディングノートを有効に活用するためのコツ

せっかく書いたエンディングノートも、内容が古くなっていたり、見つけてもらえなかったりすると、役に立ちません。以下のポイントを押さえておきましょう。

① 書くことに完璧を求めない

「全部埋めなければいけない」と気負う必要はありません。まずは書けるところから始めて、少しずつ更新していくのがポイントです。

② 定期的に見直す

状況や気持ちは時間とともに変化します。1年に1回は見直す習慣を持つと良いでしょう。

③ 保管場所を家族に伝えておく

せっかく書いても、誰にも見つけてもらえなければ意味がありません。信頼できる家族や知人に「ここにある」と伝えておきましょう。

④ 専門家のサポートを活用する

遺言書との違いや、財産の記載内容に不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談するのも安心です。必要に応じて、エンディングノートと併せて遺言書の作成も検討しましょう。


エンディングノートをきっかけに、家族と話す

エンディングノートは、書くだけで終わりではありません。それをきっかけに、ご家族と「もしものとき」のことを話し合うことが何より大切です。

たとえば…

  • 自分の延命治療についてどう考えているか
  • 財産や相続についてどう考えているか
  • 葬儀やお墓についての希望

こういった話は、普段なかなか切り出しにくいものですが、エンディングノートがあることで話のきっかけになります。


まとめ:人生を“自分らしく”終えるために

エンディングノートは、自分の想いや希望を形にし、家族への「最後の手紙」となる大切な存在です。
書くことによって、人生を振り返り、これからの生き方を見つめ直すこともできるでしょう。

そして何より、残された家族があなたの意思を知り、悩まずに行動できることが、何よりの「贈り物」になるはずです。「まだ早い」と思っている今こそ、エンディングノートを書き始めるベストタイミングかもしれません。