相続人が兄弟の場合、相続人確定するのに戸籍はどこまで必要?!

遺産相続の場面では、誰が法定相続人になるのかをまず確定する必要があります。通常は配偶者や子どもが相続人になることが多いですが、被相続人に子も親もいない場合、兄弟姉妹が相続人となるケースがあります。このような場合、相続手続きを進めるにあたっては、相続人を正確に確定するために広範な戸籍調査が必要となります。

では、相続人が兄弟姉妹になる場合、どこまでの戸籍を取得しなければならないのでしょうか。今回はその必要な戸籍の範囲や取得の目的、注意点などを詳しく解説します。


相続順位の基本と兄弟姉妹が相続人となる条件

日本の民法では、相続人の順位が以下のように定められています。

  1. 第1順位:子(直系卑属) ※子が死亡している場合は孫、孫が死亡している場合はひ孫
  2. 第2順位:父母または祖父母(直系尊属)
  3. 第3順位:兄弟姉妹 ※兄弟姉妹が死亡している場合は甥・姪

配偶者は常に相続人になりますが、1~3の順位については上位の相続人がいる場合は下位の相続人には相続権がありません。

つまり、兄弟姉妹が相続人になるのは以下の条件がすべて満たされる場合です。

  • 被相続人に子どもや養子がいない(孫やひ孫もいない)
  • 被相続人の父母(または祖父母)もすでに亡くなっている

相続人確定のために必要な戸籍の全体像

相続手続きでは、相続関係を証明するために戸籍を収集する必要があります。特に兄弟姉妹が相続人になるケースでは、単に被相続人の死亡の戸籍だけでなく、以下のように多段階にわたって戸籍を収集しなければなりません。

■ 被相続人の戸籍(出生から死亡まで)

まず、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍謄本・改製原戸籍含む)を収集します。これにより、

  • 被相続人に子どもや養子がいないこと
  • 被相続人の両親の氏名
  • 被相続人の兄弟姉妹の一部情報

などを確認できます。

■ 被相続人の両親の戸籍(出生から死亡まで)

次に必要になるのが、被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍です。これは以下の目的で必要です:

  • 両親がすでに死亡していることを確認する(直系尊属の相続権の有無の確認)
  • 両親が誰の子であるかを確認する(祖父母をたどる)
  • 両親の婚姻・離婚歴、再婚歴を確認する(異父・異母兄弟の有無の確認)
  • 両親に他の子ども(=被相続人の兄弟姉妹)がいるか確認する

■ 祖父母の戸籍

被相続人が若い場合、両親が死亡していても、祖父母が生存している可能性もあるので、直系尊属の存否確認として祖父母の戸籍(除籍・改製原戸籍)を取得する必要があります。これは、相続順位の判断に重要な意味を持ちます。


兄弟姉妹の戸籍と代襲相続人の確認

■ 兄弟姉妹の存在確認

被相続人の兄弟姉妹全員の存在を確認しなければ、相続人を確定できません。兄弟姉妹がすでに死亡していた場合でも、子(甥・姪)がいれば「代襲相続人」となり得ます。

■ 必要な戸籍

  • 各兄弟姉妹の戸籍
  • 亡くなっている兄弟姉妹の死亡を確認できる戸籍
  • 亡くなった兄弟姉妹に子がいるかどうかを確認できる戸籍(代襲相続)
  • 甥・姪がすでに亡くなっている場合、その子への再代襲はない(民法第887条)

特に異父・異母兄弟がいる場合は、親の婚姻歴や別戸籍の調査も必要になります。


実際の戸籍収集の流れ(例)

以下に、兄弟姉妹が相続人となる典型的なケースでの戸籍収集の流れを紹介します。

  1. 被相続人の死亡が記載された戸籍を取得
  2. 被相続人の出生までさかのぼった一連の戸籍(改製原戸籍・除籍含む)を取得
  3. 被相続人の父母の氏名・本籍を確認
  4. 父母の出生から死亡までの戸籍を取得
  5. 父母の婚姻歴・子の有無を確認
  6. 被相続人の兄弟姉妹の戸籍を取得
  7. 兄弟姉妹が亡くなっている場合は死亡の確認、およびその子の戸籍を取得(代襲相続人の有無を確認)
  8. 必要に応じて祖父母の戸籍を取得(父母の出生確認・直系尊属の生存確認)

戸籍収集の実務的注意点

  • 父母の本籍地が被相続人と異なる場合、複数の役所へ請求が必要
  • 兄弟姉妹が転籍していれば、それぞれの転籍先をたどる必要がある
  • 特に昭和以前の戸籍は複数の改製を経ており、取得に時間と手間がかかる
  • 改製原戸籍や除籍謄本は手書きで判読が難しいケースがある

まとめ:3代にわたる戸籍が必要になることも

相続人が兄弟姉妹だけになるケースでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍だけでなく、両親の出生から死亡までの戸籍、場合によっては祖父母の戸籍まで必要になることがあります。

これは、法定相続人を正確に確定するために不可欠であり、相続手続きをする上で必須の作業です。

戸籍の数が多く、本籍地も複数に分かれていると収集作業は煩雑になりがちです。また、内容の読解にも専門的な知識が必要になることがあります。


専門家への依頼も選択肢

相続人調査のための戸籍収集や読み解きに不安がある場合は、行政書士や司法書士など、相続手続きに精通した専門家に依頼するのが安心です。必要な戸籍を確実に取得し、相続人関係図の作成や遺産分割協議書の整備までトータルでサポートしてもらえます。

当事務所でも、被相続人の戸籍収集から相続関係説明図の作成、代襲相続人の調査まで、相続人確定に必要なすべての業務を丁寧に対応しております。兄弟姉妹が相続人になるケースは調査範囲が広くなりますので、お困りの方はぜひお気軽にご相談ください。