親族が亡くなると、深い悲しみとともに「相続」という現実的な手続きが始まります。
ただ、いざ相続が発生すると、「何から手をつければよいか分からない」という方がほとんどです。
相続には期限のある手続きも多いため、早い段階で基本のステップを踏むことが重要です。
今回は、行政書士の視点から「相続が始まったときにまず行うべき4つのこと」をわかりやすく解説します。
① 死亡届の提出と葬儀・火葬の手配
相続が始まる前提として、まずは死亡届の提出が必要です。これは戸籍法に基づく義務であり、死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村役場に届け出なければなりません。
提出先
- 亡くなった方の本籍地
- 届出人の所在地
- 死亡地(病院など)
いずれかの役所で手続きを行います。
通常、医師による死亡診断書が必要で、提出すると「火葬許可証」が交付されます。
その後、葬儀の手配や火葬の予約・準備を進めます。多くの場合、葬儀社が死亡届の提出から火葬の手配まで代行してくれますが、役所とのやり取りが必要な場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
② 遺言書の有無を確認する
死亡届の提出と葬儀の手配が落ち着いたら、早い段階で行っておきたいのが、遺言書の有無の確認です。
遺言書があるかどうかによって、相続の流れが大きく変わります。
遺言書の探し方
- 自宅の金庫や仏壇、引き出し
- 預金通帳や保険証券と一緒に保管されていることも
- 弁護士や行政書士、信託銀行に預けているケースも
また、公正証書遺言であれば、お近くの公証役場にて「遺言検索システム」で存在を確認できます。
遺言書があった場合の注意点
- 自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要(封がされていても開封はNG)
- 公正証書遺言であれば、すぐに効力が発生するため、内容に沿って相続手続きを進めます
✅ 遺言があるかないかで、相続人間の話し合い(遺産分割協議)の有無が決まります。
遺言書がある場合、原則としてその内容が優先されるため、早めに確認することが非常に重要です。
③ 相続人の確定(戸籍の収集)
遺言書の有無を確認した後は、誰が相続人になるのかを確定する作業に入ります。
これには、被相続人の戸籍を収集する必要があります。
必要な戸籍の範囲
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍・改製原戸籍含む)
- 相続人の戸籍(関係性がわかるもの)
この作業を通じて、配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹といった法定相続人が確定します。
なお、相続人の中にすでに死亡している人がいる場合は、その子や孫が代わって相続する「代襲相続」が発生することもあるため、注意が必要です。
🔍広域交付制度を使えば、全国の戸籍を1か所の役所で取得できるため、時間と手間を省くことができます(令和6年から開始)。
④ 相続財産の調査と把握
相続人が確定したら、次は遺産の内容を調査します。
財産には、プラスの財産(資産)だけでなく、マイナスの財産(借金)も含まれます。
調査する財産の例
- 預貯金(銀行・ゆうちょ・信用金庫など)
- 不動産(自宅、土地、賃貸物件など)
- 株式や投資信託
- 生命保険の死亡保険金(※受取人が本人の場合は相続財産)
- 借金や住宅ローン、カードローンなどの負債
この時点で、相続人がとるべき選択肢(単純承認、限定承認、相続放棄)を検討します。
相続放棄や限定承認は、相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
⚠「負債があるかどうかわからない」「財産の規模が不明」な場合でも、3か月以内に判断が必要です。
調査には時間がかかることもあるので、早めに専門家に相談しましょう。
まとめ|相続の第一歩は“情報の整理”から
相続が発生したとき、最初にやるべきことは以下の4つです。
- 死亡届の提出と葬儀・火葬の手配
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人の確定(戸籍の収集)
- 相続財産の調査と把握
これらを丁寧に進めることで、後々の手続き(遺産分割、登記、名義変更など)がスムーズになります。
感情的に動きやすい時期だからこそ、冷静に情報を整理することが、円満な相続への第一歩です。
たいまつ行政書士事務所では、戸籍収集や遺産分割協議書の作成など、相続の初期対応から実務サポートまでお手伝いしています。
「何から始めてよいかわからない…」という方も、まずはお気軽にご相談ください。





