
近年、ネット銀行やネット証券を利用する方が増えていますが、相続手続きにおいては従来の金融機関とは異なる点がいくつかあります。インターネット上で完結するサービスだからこそ、相続人が手続きを進める際には特別な注意が必要です。本記事では、ネット銀行・ネット証券の相続手続きの流れや注意点について解説します。
ネット銀行・ネット証券の相続手続きの流れ
ネット銀行やネット証券の相続手続きは、基本的に以下の流れで進められます。
- 被相続人(故人)の口座の確認
- まず、故人がどのネット銀行・ネット証券を利用していたかを確認します。
- インターネット専業の金融機関の場合、通帳がなく、家族が把握しづらいことが多いため、過去のメールやパソコンのログイン履歴を確認する必要があります。
- 金融機関への連絡
- 各ネット銀行・ネット証券のカスタマーサポートに連絡し、相続手続きを開始します。
- 一部の金融機関では、ウェブサイト上に相続専用の問い合わせフォームを設けている場合もあります。
- 必要書類の提出
- 一般的に以下の書類が求められます。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの連続したもの)
- 相続人の戸籍謄本
- 遺言書(ある場合)
- 遺産分割協議書(相続人が複数いる場合)
- 相続人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 被相続人の銀行・証券口座の情報
- 一般的に以下の書類が求められます。
- 口座の凍結と解約・名義変更
- 通常、相続手続きを開始すると口座は一時的に凍結されます。
- 書類審査が完了後、相続人への払い戻しや名義変更が行われます。
ネット銀行・ネット証券の相続手続きで注意すべきポイント
口座の存在を把握しづらい
ネット銀行やネット証券には紙の通帳がなく、取引明細もオンライン上で管理されているため、家族が故人の口座を把握するのが難しいことがあります。そのため、以下のような方法で確認しましょう。
- 故人のパソコンやスマートフォンのメールを確認する。
- クレジットカードや銀行口座の取引履歴を調べる。
- 家族と普段から利用している金融機関について話し合っておく。
ID・パスワードの不正使用に注意
ネット銀行やネット証券のログインIDやパスワードを知っていたとしても、故人の死後に相続人が勝手にログインし、資産を移動させることは違法です(私的利用や不正アクセスに該当する可能性があります)。正規の手続きを経て相続手続きを進めましょう。
ネット証券の相続は特に複雑
ネット証券の場合、保有している金融商品によって手続きが異なります。
- 株式や投資信託:相続人の証券口座への移管、または換金が必要。
- 外国株式:国内株よりも手続きが煩雑になる場合が多い。
- NISA口座:非課税枠は相続時で終了し、以降は通常口座の課税対象での取り扱いになる。
相続税の申告を忘れずに
ネット銀行やネット証券の資産も相続財産に含まれ、相続税の対象となります。特に、証券口座内の株式や投資信託は評価額が変動するため、相続時点での適切な評価額を算出する必要があります。相続税申告の期限(相続開始後10か月以内)を忘れずに対応しましょう。
事前にできる対策
相続手続きをスムーズに進めるために、以下の準備をしておくことをおすすめします。
- エンディングノートの活用:利用しているネット銀行・ネット証券の情報を家族に伝える。
- 家族信託の活用:生前に家族信託を活用することで、相続時の混乱を防ぐ。
- 遺言書を作成:遺産分割協議をしなくても、手続きができる。
まとめ
ネット銀行・ネット証券の相続手続きは、従来の金融機関と異なり、口座の存在が把握しにくかったり、オンライン手続きが必要だったりと、特有の課題があります。スムーズに手続きを進めるためには、事前に口座情報を整理し、適切な準備をしておくことが重要です。
相続でお困りの際は、専門家である行政書士や司法書士に相談することで、スムーズな手続きを進めることが可能です。当事務所では、ネット銀行やネット証券の相続手続きについても丁寧にサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。