
夫婦が協議離婚をする際、話し合いの内容をきちんと文書化したものが離婚協議書です。口約束だけで離婚は可能ですが、養育費の未払いや財産分与の不履行など、後々のトラブルを避けるためには必ず書面で残すべきです。
この記事では、離婚協議書を作成するときの注意点と、公正証書化の重要性について解説します。
離婚協議書を作成する目的
離婚協議書には、次のような目的があります。
- 約束の証拠を残す
口頭の約束では「そんな話はしていない」と否定される可能性があります。 - 養育費・慰謝料の支払いを確実にする
長期にわたる支払いの履行を確保します。 - トラブル防止
取り決めを明確にして、解釈の食い違いを防ぎます。
特に金銭の支払いが関係する場合は、公正証書にして強制執行できる形にしておくことが安心です。
離婚協議書に盛り込むべき項目
離婚協議書の内容は夫婦ごとの事情によって異なりますが、次のような項目は基本的に盛り込みます。
(1) 基本情報
- 当事者の氏名・住所・生年月日
- 離婚日と離婚の合意についての明記
(2) 財産分与
- 分与する財産の特定(不動産、預貯金、保険など)
- 分与の方法(現金一括払い・物件の譲渡など)と期限
(3) 養育費
- 月額金額
- 支払い期間(例:子が満22歳に達する年度の3月まで)
- 支払方法(振込先口座、支払日)
- ボーナス払いの有無
- 増額・減額の条件(収入変動や進学時)
(4) 慰謝料
- 金額、一括か分割か、支払期限
(5) 親権・監護権
- 親権者と監護権者の指定(必要に応じて分ける)
(6) 面会交流
- 頻度(例:月2回)、時間帯、場所
- 特別な行事の対応(誕生日や運動会など)
(7) 年金分割
- 割合(最大50%まで)
- 年金事務所での手続き方法の合意
曖昧な表現は避ける
離婚協議書は契約書です。
「できるだけ払う」「可能な限り面会させる」といった曖昧な表現は無効リスクが高まります。金額・期限・方法を明確に記載することが重要です。
NG例
「養育費は月々数万円程度支払う」
OK例
「養育費は毎月25日限り、月額10万円を子が満22歳に達する年度の3月まで、甲名義の銀行口座に振り込む」
公正証書にして強制執行を可能にする
離婚協議書を紙で作っただけでは、支払いが滞った場合にすぐ強制執行はできません。
「強制執行認諾条項」付きの公正証書にすることで、裁判を経ずに差押えが可能になります。
特に養育費や慰謝料など、長期の金銭支払いがある場合は必須と言えるでしょう。
将来の変更に備える条項を入れる
養育費や面会交流は、子どもの成長や生活環境の変化で見直しが必要になる場合があります。
「事情が大きく変わった場合は協議のうえ変更できる」旨の条項を入れておくと柔軟に対応できます。
感情的な文言は避ける
離婚原因や相手への非難など、感情的な内容は不要です。
離婚協議書は法的効力を持たせるための文書ですので、事実と合意事項だけを簡潔に記載します。
専門家に確認してもらう
インターネットのテンプレートだけで作ると、重要な条項が抜け落ちることがあります。
弁護士や行政書士などの専門家に相談すれば、あなたの事情に合わせた内容に調整してもらえます。特に公正証書化する場合は、事前に相談しておくとスムーズです。
まとめ
離婚協議書は、協議離婚の約束を法的に確実にするための重要な書類です。
作成時は以下の点を押さえましょう。
- 金額・期限・方法を具体的に記載する
- 財産分与・養育費・親権など重要項目を漏らさない
- 公正証書化して強制執行を可能にする
- 将来の変更に備えた条項を入れる
- 感情的な記載は避け、事実と合意事項だけを書く
- 専門家に確認してもらう
離婚は感情的になりやすい場面ですが、将来のトラブルを防ぐために冷静に文書を整えることが何より大切です。