近年、金属スクラップや廃プラスチックなどの再生資源物を屋外で保管・処理する「スクラップヤード」が全国的に増加しています。これらの施設は資源循環に重要な役割を果たす一方で、火災や騒音、悪臭、保管物の崩落、油の流出など、周辺環境へ影響を及ぼす事例も各地で発生しています。
こうした状況を受け、群馬県では「群馬県再生資源物の屋外保管等の規制に関する条例」を制定し、令和8年(2026年)10月1日から新たな許可制度を導入します。
これまでスクラップヤードの開設を検討していた事業者にとってはもちろん、すでに営業している事業者にとっても大きな影響を与える条例です。本記事では、第1回として条例が制定された背景や目的、対象となる事業について解説します。
なぜスクラップヤード条例が制定されたのでしょうか?
スクラップヤードとは、金属スクラップや廃プラスチックなどの再生資源物を保管、選別、加工する事業場をいいます。
資源のリサイクルを支える重要な施設ですが、その一方で、近年は次のような問題が全国で発生しています。
- 金属スクラップや廃プラスチックの火災
- 保管物の高積みによる崩落事故
- 油や汚水の流出による土壌・水質汚染
- 騒音や振動による生活環境への影響
- 粉じんや悪臭の発生
- 景観の悪化
- 不適切な管理による近隣住民とのトラブル
このような問題は、単に事業者と近隣住民との問題にとどまらず、消防活動や地域の安全にも影響を及ぼす可能性があります。
群馬県内でも金属スクラップ等を扱う事業場が増加していることから、適正な管理を図るため、新たな条例が制定されました。
廃棄物処理法だけでは対応できなかった理由
「スクラップヤードなら廃棄物処理法で規制されるのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際にはそうとは限りません。廃棄物処理法が規制するのは、不要となり処分される「廃棄物」です。
一方、スクラップヤードで保管されるものの多くは、
- 鉄スクラップ
- アルミ
- ステンレス
- 銅線
- 非鉄金属
- 廃プラスチック
など、市場で売買される資源として価値のある「再生資源物」です。
これらは「有価物」として取り扱われる場合が多く、廃棄物処理法による規制の対象外となるケースがあります。
つまり、生活環境への影響が生じるおそれがあるにもかかわらず、十分な法的規制が及ばないという「法の空白」が存在していました。
群馬県条例は、この空白を補うことを目的として制定されたものです。
条例の目的
条例では、再生資源物屋外保管業について必要な規制を設けることで、
- 災害の防止
- 生活環境の保全
- 周辺住民の安全確保
- 適正な事業運営の推進
を図ることを目的としています。スクラップヤード事業そのものを規制・排除するための条例ではありません。
適切な設備や管理体制を整えた事業者が、安全かつ継続的に事業を行えるようにすることも、この条例の重要な目的の一つです。
「再生資源物」とは何でしょうか?
条例では、「再生資源物」とは、再生利用を目的として保管・処理される資源物をいいます。
代表的なものとしては、
- 鉄スクラップ
- 非鉄金属
- アルミ
- ステンレス
- 銅線・ケーブル
- 金属を含む機械類
- 廃プラスチック
- 金属とプラスチックの混合物
などが挙げられます。
これらはリサイクル資源として価値がある一方で、大量に屋外へ保管されることにより、火災や環境汚染などのリスクを伴うことがあります。
一方、廃棄物、使用済自動車・解体自動車等、有害使用済機器は対象外となります。
どのような事業が条例の対象となるのでしょうか?
条例の対象となるのは、屋外において積上げ作業用の機械を使用して再生資源の保管や破砕当をする「再生資源物屋外保管業」です。また、事業所の敷地面積が100㎡を超える場合となります。
具体的には、金属又はプラスチック(これらを含む混合物を含みます。)を屋外で保管又は処理し、油圧ショベルや一定規模以上のフォークリフト(最大揚高3m超)を用いて積み上げ作業等を行う事業が対象となります。
一方で、次のようなケースは条例の対象外・適用除外とされています。
- 自ら原材料として使用するために保管等をする事業(対象外)
- 産業廃棄物収集運搬業許可業者(積替保管を含む場合に限る)
- 産業廃棄物処分業許可業者
- 家電リサイクル法認定業者
- 小型家電リサイクル法認定業者
- 自動車リサイクル法の解体業許可業者・破砕業許可業者
- 国や地方公共団体が行う事業
- 条例で定めるその他の対象外施設
実際に対象となるかどうかは、保管する物の種類や事業内容、施設の状況などによって判断されるため、開業前の確認が重要です。
チェックしてみましょう!あなたの事業は対象?
次の項目に当てはまる場合は、条例の対象となる可能性があります。
□ 金属やプラスチックを屋外で保管している
□ リサイクル目的で保管・加工している
□ 油圧ショベルや大型フォークリフト(最大揚高3m超)を使用している
□ スクラップヤードを新たに開設する予定である
□ 自社工場の原材料保管ではない
複数該当する場合は、条例や施行規則の内容を確認し、早めに準備を進めることをおすすめします。
新規事業者と既存事業者で対応が異なります
条例の施行後は、新たにスクラップヤードを開設する事業者は、原則として県知事の許可を受ける必要があります。
一方、条例施行前から営業している事業者については、経過措置として「みなし許可」が設けられています。
ただし、みなし許可を受けるためには、施行日から6月間以内(令和9年3月31日まで)に、必要な届出を行わなければなりません。
既存事業者だから何もしなくてよいというわけではありませんので、注意が必要です。
今から準備を始めることが大切です
スクラップヤードの許可制度では、許可申請だけでなく、
- 事前協議
- 施設基準への適合
- 関係法令の確認
- 添付書類の作成
など、多くの準備が必要になります。
土地を契約した後で「許可が取得できない」と判明すると、大きな損失につながる可能性もあります。
そのため、開設計画の初期段階から専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ
群馬県再生資源物の屋外保管等の規制に関する条例は、スクラップヤード等による火災や環境問題を未然に防止し、地域住民の安全・安心な生活環境を守るために制定された条例です。
条例の施行により、一定の事業については県知事の許可が必要となり、施設基準や維持管理基準を満たした適正な運営が求められます。
特に、新たにスクラップヤードの開設を予定している事業者は、早い段階から条例の内容を理解し、計画的に準備を進めることが重要です。
次回(第2回)は、「許可申請の流れと事前協議」「みなし許可制度」「欠格要件」「住民説明」など、実際の手続きについて詳しく解説します。





