これまで第1回では条例制定の背景や規制対象となる事業、第2回では許可申請の流れについて解説しました。
最終回となる今回は、許可を受けた後に事業者が遵守しなければならない構造基準と維持管理基準について解説します。
スクラップヤードの許可は取得して終わりではありません。営業開始後も条例で定められた基準を継続して守ることが求められます。
構造基準とは?
構造基準とは、スクラップヤードの施設そのものが備えるべき基準です。
これらの基準は、
- 火災の防止
- 周辺住民の安全確保
- 土壌や河川の環境保全
- 保管物の飛散・流出防止
などを目的として定められています。
許可申請の際には、施設計画がこれらの基準に適合していることが審査されます。
囲いの設置
スクラップヤードでは、敷地の境界を明確にするため、適切な囲いを設置しなければなりません。荷重が直接かかる場合には構造耐力上安全な囲いが必要となります。
囲いには、
- 保管物の飛散防止
- 無断立入りの防止
- 境界の明確化
という役割があります。また、みだりに人が事業場内に立ち入るの防止でき、出入口の門扉部分にあっては、高さが2メートル以上あり、かつ施錠できることが求められます。
床面の構造
スクラップヤードでは、油分や有害物質を含む再生資源物を取り扱うことがあります。
そのため、土壌汚染を防止するための床面構造が求められます。
例えば、
- コンクリート舗装
- アスファルト舗装(不浸透性)
- その他不浸透性を有する構造
などが必要になる場合があります。
未舗装のまま営業できるとは限りませんので注意が必要です。
排水設備と油水分離設備
雨水によって油分が敷地外へ流出すると、水路や河川の汚染につながる可能性があります。
そのため、
- 排水溝
- 油水分離装置
- 集水設備
などを設置し、排水基準を守り、適切に管理することが求められます。
施設の規模や取扱品目によって必要な設備は異なります。
保管方法にもルールがあります
スクラップを高く積み上げすぎると、
- 崩落事故
- 火災時の延焼
- 消火活動の妨げ
などの危険があります。
条例では、最大保管の高さ(5m以下)や50%勾配の線、敷地境界までの距離など、安全に保管できるよう積み上げ方法や保管方法についても基準が設けられています。
事業者は、常に安全な保管状態を維持しなければなりません。
火災・延焼防止対策
近年、全国各地でスクラップヤード火災が発生しています。
火災は事業者だけでなく、近隣住民にも大きな被害を及ぼします。
そのため、
- 電池、潤滑油等の適正な回収、処理
- 保管場所の間に仕切りの設置または2m以上の間隔をあける
- 消火設備の設置
- 定期点検
など、火災予防を徹底する必要があります。
消防法に基づく設備が必要となる場合もありますので、消防署との事前協議も重要です。
発生等防止措置・保管等状況の視認性
そのほか、発生防止や保管等状況の視認性の対策が求められています。
- (害獣・害虫)ネズミの生息及び蚊、はえ、その他の害虫の発生を防止する措置
- (騒音・振動による支障)重機等の稼働、保管物の積上げ・積下げ、破砕等によって発生する騒音・振動で、生活環境の保全上の支障を生じないように措置
- (保管等状況の視認性)営業時間内は、外部から屋外保管等の状況が確認できること
などの対策が必要になります。
標識の設置
条例では、施設の入口など見やすい場所に標識を掲示することが求められています。
標識には、
- 許可を受けた事業者名
- 許可番号
- 連絡先
などを表示することになります。
これにより、地域住民や行政が施設の管理者を容易に確認できるようになります。
維持管理基準も重要です
施設を整備しただけでは許可を維持することはできません。
営業開始後は、
- 敷地内の清掃
- 保管量の管理
- 飛散防止
- 悪臭防止
- 騒音防止
- 排水設備の維持管理
などを継続して行う必要があります。
条例では、日常的な管理も重要な義務となっています。
帳簿の作成・保存
条例では、再生資源物の搬入・搬出状況などについて帳簿を備え、一定期間保存することが求められます。
行政による立入検査では、帳簿の内容も確認されることがあります。
日頃から正確な記録を残すことが重要です。
また、帳簿の記載や保管等ができ、搬出入の状況が監視できる事務所の設置も必要とされています。
現場責任者の役割
スクラップヤードでは、施設全体を管理する責任者を配置し、安全管理や維持管理を行うことが重要です。
従業員への教育や事故防止も、責任者の重要な役割といえるでしょう。
行政による立入検査
条例では、県職員による立入検査が行われる場合があります。
検査では、
- 構造基準への適合
- 維持管理状況
- 帳簿
- 標識
- 保管状況
などが確認されます。
改善が必要な場合は指導や勧告が行われます。
命令・罰則
条例に違反した場合には、
- 改善命令
- 許可取消し
- 営業停止
- 罰則
などの対象となる可能性があります。
無許可営業や命令違反については、刑事罰が科される場合もあります。
条例以外にも確認すべき法令があります
スクラップヤードを開設する際には、この条例だけではなく、
- 都市計画法
- 農地法
- 建築基準法
- 消防法
- 盛土規制法
- 河川法
- 景観条例
など、多くの法令が関係します。
例えば、市街化調整区域では建築物の建築や土地利用に制限がある場合がありますし、農地を利用する場合は農地転用許可が必要になることもあります。
そのため、条例だけで判断せず、関係法令を含めた総合的な確認が欠かせません。
まとめ
3回にわたり、群馬県再生資源物屋外保管業の許可制度について解説しました。
令和8年10月1日からは、一定のスクラップヤードについて許可制度が導入されます。
事業を円滑に開始・継続するためには、
- 条例の内容を理解すること
- 許可申請を適切に行うこと
- 構造基準・維持管理基準を継続して守ること
- 関係法令も含めて事前に確認すること
が重要です。
群馬県内でスクラップヤードの新設や事業継続をご検討の方は、お気軽にご相談ください。





