相続人の一人が亡くなった場合でも遺産分割協議のやり直しは可能?

遺産分割協議は、相続人全員で被相続人の遺産の分け方を話し合い、合意をもって成立するものです。しかし、協議成立後に何らかの事情により「やり直したい」となるケースもあります。特に問題となるのが、協議後に相続人の一人が亡くなってしまった場合です。こうした場合でも、遺産分割協議のやり直しは可能なのでしょうか?

この記事では、相続人の一人が亡くなった場合における遺産分割協議のやり直しの可否や注意点について解説します。


そもそも遺産分割協議のやり直しは可能?

まず前提として、遺産分割協議のやり直し自体は可能です。以下のような事情がある場合、協議の無効や取消し、または再協議が行われることがあります。

  • 協議の内容に錯誤・詐欺・強迫などがあった場合
  • 遺産の内容に重大な見落としがあった場合
  • 未分割の遺産が残っていた場合
  • 相続人の一部が参加していなかった場合
  • 相続人全員の合意がある場合

したがって、相続人全員が同意すれば、原則として再協議は可能です。


相続人の一人が死亡してしまった場合

問題は、再協議の前提となる「相続人全員の合意」が取れない状態、つまり、相続人の一人が亡くなってしまったケースです。この場合、その故人となった相続人の意思確認ができないため、やり直しは不可能になってしまうように思えます。

しかし、実際には次のような方法があります。

■ 亡くなった相続人の相続人(代襲相続人)が引き継ぐ

亡くなった相続人にも相続人がいる場合、その人たちが「再協議に参加する権利」を引き継ぎます。つまり、再協議には故人の代わりに、その相続人(例えば子供や配偶者など)が加わることになります。

これを「再分割協議への参加権の承継」と呼びます。形式的には、新たに構成し直された「相続人全員」で再協議を行うことになります。


再協議の実務上の注意点

1. 故人の相続人の特定が必要

再協議に参加するためには、亡くなった相続人の法定相続人を確定しなければなりません。そのためには、戸籍の収集や相続関係説明図の作成が必要となります。

2. 遺産分割協議書の再作成が必要

再協議により合意が成立した場合は、新たに遺産分割協議書を作成し、参加したすべての相続人(および承継者)が署名・押印する必要があります。印鑑証明書の提出も必要です。

3. 登記・名義変更のやり直しも必要になる可能性

不動産など、すでに相続登記が完了している場合でも、再協議によって内容が変わる場合は登記の変更手続き(更正登記や抹消登記)が必要になります。手続きは煩雑になるため、司法書士など専門家の協力を得るのが現実的です。


注意すべきケース:再協議に反対する人がいる場合

再協議は、全員の同意があってはじめて成立するため、1人でも反対者がいればやり直しはできません。特に、亡くなった相続人の法定相続人が複数いる場合は、その全員の同意が必要になるため、調整が難しくなることがあります。


実際にあった相談事例(参考)

あるご相談者様のケースでは、遺産分割協議成立後に相続財産に未記載の不動産が見つかりました。その後、相続人の一人が亡くなってしまったため、再協議の必要性が生じました。

結果的に、故人の配偶者と子どもたちが代わって協議に参加し、全員の合意のもとで再協議が成立。不動産の名義変更手続きも無事完了しました。

このように、亡くなった相続人がいたとしても、その相続人の協力が得られれば再協議は可能です。


まとめ:再協議は可能だが、早めの対応が鍵

  • 遺産分割協議は、条件によってやり直すことができます
  • 相続人の一人が亡くなっていても、その相続人の法定相続人が承継して参加可能
  • ただし、全員の同意が必要なので、調整には注意が必要
  • 実務上は、戸籍調査や協議書の再作成、登記変更などの手続きが伴う

遺産分割協議をやり直したいと考えた時には、早めに専門家に相談することが大切です。状況が複雑化する前に対応することで、円満な解決につながります。当事務所では、遺産分割協議のやり直しや再協議書の作成支援も承っております。相続に関してお悩みの方は、お気軽にご相談ください。