
市街化調整区域内にある店舗を別の用途に変更する場合、一般的な市街化区域内とは異なる手続きが必要となります。特に市街化調整区域は原則として開発や建築が制限されているため、用途変更についても一定の規制があります。本記事では、市街化調整区域内にある店舗の用途変更手続きについて、具体的な流れや必要書類、注意点を解説します。
市街化調整区域とは?
■ 市街化調整区域の概要
市街化調整区域とは、都市計画法第7条に基づき「市街化を抑制すべき区域」と定められたエリアです。原則として新たな建物の建設や用途変更が厳しく制限されており、開発行為や建築行為は原則禁止です。
■ 市街化区域との違い
区分 | 市街化区域 | 市街化調整区域 |
---|---|---|
開発・建築 | 比較的自由 | 原則禁止 |
用途変更 | 建築基準法や都市計画法の規定に基づく | 厳格な規制あり |
許可の必要性 | 一定の場合に必要 | 基本的に許可が必要 |
市街化調整区域内の用途変更とは?
■ 用途変更の定義
用途変更とは、既存の建物の使用目的(用途)を変更することを指します。例えば、次のような変更が該当します。
- 事務所 → 飲食店
- 倉庫 → 小売店
- 住宅 → 店舗
市街化調整区域内では、建物の用途変更も原則禁止となっているため、用途変更の際は原則として許可を取得する必要があります。
市街化調整区域内で用途変更が認められるケース
市街化調整区域内で用途変更を行う場合、すべてが許可されるわけではありません。以下のケースでは、用途変更が比較的認められやすくなります。
既存の建物が「既存建築物」として認められる場合
- 昭和45年11月24日の都市計画法施行前から存在する建物
- 都市計画法施行後に適法に建築された建物
この場合、用途変更であっても「既存建築物の範囲内」であれば許可が下りやすくなります。
地域の発展に資する用途の場合
例えば、次のような用途に変更する場合は認められる可能性が高くなります。
- 地域の住民サービスに貢献する店舗(コンビニ・飲食店など)
- 地域住民向けの介護施設、福祉施設
- 地域振興や経済発展に寄与する事業
市街化調整区域内の用途変更手続きの流れ
市街化調整区域内で用途変更を行う場合、以下の流れで手続きを進めます。
ステップ①:事前相談
■ 自治体(市町村)への相談
まずは、用途変更を検討している建物の所在地を管轄する市町村の都市計画課や建築指導課などに事前相談を行います。
【主な相談内容】
- 建物の現況(用途、構造、規模など)
- 変更後の用途(飲食店、小売店、事務所など)
- 地域への影響(交通量、騒音など)
この段階で、自治体から用途変更に関する許可の可否や手続き方法について概略を教えてもらえます。
ステップ②:必要書類の準備
事前相談で用途変更が可能であると確認できた場合、次の書類を用意します。
書類名 | 内容 |
---|---|
用途変更許可申請書 | 用途変更の概要を記載します。 |
建築確認申請書(用途変更) | 建築基準法第87条に基づく用途変更の許可申請書です。 |
建物の登記事項証明書 | 建物の所有権や現況を証明するための書類です。 |
配置図・平面図 | 現在の建物の間取りや位置を示す図面です。 |
公図 | 該当土地の地図情報です。 |
事業計画書(必要に応じて) | 店舗としてどのように運営するかを記載します。 |
ステップ③:建築確認申請の提出
市町村への用途変更許可申請と同時に、建築確認申請も提出する必要があります。
特に構造に影響を与える用途変更(例えば、住宅→店舗など)では建築基準法の適合審査が行われます。
審査期間:
通常は2週間〜1か月程度かかります。
ステップ④:許可の取得
用途変更許可と建築確認が下りれば、正式に用途変更が可能となります。
許可書には次のような内容が記載されます。
- 許可番号
- 許可日
- 用途変更内容
ステップ⑤:用途変更後の営業開始
許可取得後は、法務局で建物の用途変更登記を行います(必要な場合)。
また、事業内容によっては次の許認可申請が必要になる場合があります。
用途変更内容 | 必要な追加許可 |
---|---|
飲食店 | 飲食店営業許可、深夜酒類提供届出等 |
理美容室 | 理容所・美容所開設届 |
学習塾 | 開設届出(必要に応じて) |
用途変更の際の注意点
市街化調整区域内で用途変更を行う場合、以下の点に注意してください。
事前相談は必須
用途変更の可否は自治体の判断に委ねられます。事前相談を行い、可否を確認することが非常に重要です。
適法建築物であること
建物が適法に建築されたものであることが前提条件です。違法建築物は用途変更許可が下りない場合があります。
開発許可と用途変更許可は異なる
市街化調整区域内では開発許可と用途変更許可が混同されやすいですが、全く異なる手続きです。用途変更のみであれば開発許可は不要ですが、増築・改築が伴う場合は開発許可が必要になる場合があります。
まとめ
市街化調整区域内にある店舗の用途変更は、通常の用途変更とは異なり厳しい規制があります。しかし、事前相談をしっかりと行い、適切な手続きを踏むことで、用途変更許可を取得できる可能性があります。
もし市街化調整区域内の用途変更手続きについてご不明な点があれば、行政書士にご相談ください。適切な手続きとスムーズな用途変更をサポートいたします。