農地転用の基礎知識

農地転用とは、農地を農地以外の用途、たとえば宅地や駐車場、資材置き場などに変更することを指します。この手続きを進めるためには、農地法に基づいた農地転用許可制度における許可が必要で、本記事では、許可制度の概要や申請の流れについて解説します。


農地転用許可制度の概要

農地転用許可制度は、農地法に基づき、日本の食料自給率を維持するための優良農地の確保と、農地の無秩序な開発を防ぎ計画的な土地利用の推進を図ること目的に、農地を他の用途に転用する際に必要な許可制度です。農地の優良性や周辺の土地利用状況等により農地を区分し、転用を農業上の利用に支障が少ない農地に誘導するとともに、具体的な転用目的を有しない投機目的や、資産保有目的での農地の取得は認めないことと規制されています。


許可の方針

農業上の利用に支障が少ない農地へ誘導を図りつつ、立地基準と一般基準に基づき、許可・不許可の方針が定められています。

区分による立地基準

原則不許可

  • 農用地区域内農地:市町村が定メル農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地
  • 甲種農地:市街化調整区域内で、農業公共投資後8年以内の農地と、集団農地で高性能農業機械での営農可能農地
  • 第1種農地:集団農地(10ha以上)、農業公共投資対象農地、生産力の高い農地

第3種農地に立地困難な場合等に許可

  • 第2種農地:農業公共投資の対象となっていない小集団の生産力の低い農地、市街地として発展する可能性のある農地

原則許可

  • 第3種農地:都市的整備がされた区域内の農地、市街地にある農地

一般基準(不許可基準)

  • 転用の確実性が認められない場合
  • 周辺農地への被害防除措置が適切でない場合
  • 一時転用の場合に農地への原状回復が確実と認められない場合
  • 他法令の許認可の見込みがない場合
  • 関係権利者の同意がない場合
  • その他

許可権者

農林水産大臣許可

農地が4haを超える場合には、農林水産大臣の許可が必要です。申請者は都道府県知事に対して申請書を提出し、知事は意見書を付して農林水産大臣へ送付します。

都道府県知事許可

農地が4ha以下の場合には、都道府県知事の許可が必要です。申請者は農業委員会に対して意見書を提出し、知事は農業会議の意見を聞いた上で許可・不許可の判断をします。なお、農地が2ha~4haの転用について知事が許可をしようとするときには大臣と協議します。

届出制(市街化区域内)

市街化区域内の農地を転用する場合には、農業委員会にあらかじめ届出を行えば許可は不要です。


農地法第4条と第5条許可

第4条許可

農地所有者が農地を転用する場合(自己転用の場合)、農地法第4条の許可が必要で、農地所有者が申請します。

第5条許可

転用するために農地の権利を設定移転する場合、農地法第5条の許可が必要で、譲渡人と譲受人双方による申請が必要となります。


農地転用の流れ

事前相談

まずは、所管の農業委員会に事前相談を行うことをおすすめします。相談することで、転用の可能性や必要な手続きを具体的に把握できます。

必要書類の準備

  • 許可申請書(所定の様式)
  • 土地登記全部事項証明書
  • 土地の公図、位置図、付近状況図、土地利用計画図等
  • 資金調達証明書
  • その他、参考となるべき書類

申請書の提出

必要書類を揃え、農業委員会または都道府県知事へ提出します。

審査と許可

申請内容が審査され、問題がなければ許可が下ります。審査には通常1~2か月程度の時間がかかります。


注意点とリスク

許可なしの転用は違法

許可を得ずに農地を転用した場合、農地法違反となり、原状回復命令や罰則が科される可能性があります。

申請が却下される場合も

すべての申請が許可されるわけではありません。特に良質な農地や農業振興地域内の農地は、審査が厳しいです。


まとめ

農地転用は、計画的かつ慎重な手続きが求められる重要なプロセスです。許可の取得には、事前の準備と正確な申請が不可欠です。農業委員会への事前相談や必要書類の作成、申請の代理まで、経験豊富な行政書士に相談することで、スムーズかつ確実な手続きを進めることができます。