一般社団法人と一般財団法人の設立の違いについて

法人の設立を検討されている方の中には、「一般社団法人」と「一般財団法人」の違いがよく分からず、どちらを選べばよいか迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

どちらも営利を目的としない「非営利法人」として位置づけられていますが、設立の要件や運営の仕組みに大きな違いがあります。今回は、一般社団法人と一般財団法人の基本的な違いから、設立時のポイントまで分かりやすく解説いたします。


一般社団法人と一般財団法人の違いは「設立の基礎」にあり

まず、両者の根本的な違いは「誰が設立できるのか」「何をもって成立するのか」にあります。

一般社団法人一般財団法人
設立の基礎人(社員)財産
設立者数2人以上の社員が必要財産拠出者は1人でも可
設立の要件社員2名以上+定款認証300万円以上の財産拠出+定款認証
運営主体社員総会と理事理事会(評議員会が必要な場合あり)

一般社団法人は「人」で成り立つ法人

一般社団法人は、2人以上の社員(法人における会員のような存在)が集まって設立する法人です。ここでいう「社員」とは、株式会社の「社員(従業員)」とは異なり、法人の意思決定に関わる構成員を指します。

資本金や財産の拠出は必須ではないため、比較的設立しやすいのが特徴です。

一般財団法人は「財産」で成り立つ法人

一方、一般財団法人は、設立者が拠出した財産を元に設立されます。つまり、運営の主役は「社員」ではなく「拠出された財産」となります。

設立時には300万円以上の財産を拠出する必要があるため、資金的なハードルはやや高くなります。


設立の手続きの流れ

両者ともに、主な設立手続きには以下のような共通点があります。

  • 定款の作成と公証人による認証
  • 設立登記の申請(法務局)

ただし、詳細な流れや必要書類に違いがあります。

一般社団法人の設立手続き

  1. 定款の作成(社員2名以上で内容決定)
  2. 公証人役場で定款認証
  3. 設立時役員の選任(理事、監事など)
  4. 設立登記(法務局)

特に資本金が不要なため、比較的スムーズに設立できます。

一般財団法人の設立手続き

  1. 財産拠出者が拠出金を準備(300万円以上)
  2. 定款の作成(設立者が決定)
  3. 公証人役場で定款認証
  4. 設立時役員(理事、評議員など)の選任
  5. 設立登記(法務局)

また、財団法人の場合、評議員会の設置が原則として義務付けられており、その分、ガバナンス体制が厳格です。


運営面での違い

設立後の法人運営にも違いがあります。

一般社団法人の運営

  • 社員総会が最高意思決定機関
  • 理事が業務執行を担当
  • 社員は増減可能で、法人の活動方針に柔軟性あり

社員の意向により方向性を変更しやすいため、仲間と一緒に運営していきたい方に向いています。

一般財団法人の運営

  • 評議員会、理事会、監事など厳格な機関設計が必要
  • 財産の目的使用が基本で、使途の自由度が低い
  • 基本財産の維持が求められるため、柔軟性はやや乏しい

社会的信用が重視される活動や、寄付金を活用した長期的な公益活動に向いています。


どちらを選ぶべき?目的に応じた選択を

選択のポイントは、「何を目的に法人を設立するのか」によって変わります。

法人の目的適した法人形態
仲間と一緒に地域活動や任意団体から法人化したい一般社団法人
財産をもとに公益的な事業を安定的に行いたい一般財団法人
事業を収益化せず、社会貢献を優先したい一般財団法人(公益認定も視野に)
将来的に会員を募ってイベントや講座を開催したい一般社団法人

設立後の管理・運営にも注意

どちらの法人も、毎年の「事業報告書類の作成・備置」が義務づけられています。また、法人の活動が目的に沿っていないとみなされた場合、認可の取消しや解散命令が下される可能性もあるため、設立後の管理・運営も慎重に行う必要があります。


まとめ

項目一般社団法人一般財団法人
設立に必要な人員社員2人以上拠出者1人でも可
財産の要件不要300万円以上の財産が必要
設立費用比較的安価若干高め
柔軟性高い低め
公益性・信用性任意で公益認定可高い傾向

法人設立は、目的や将来の展望によって選択が変わってきます。「設立したはいいけれど、思ったように運営できない…」という事態を避けるためにも、事前の準備と正しい知識がとても重要です。当事務所では、一般社団法人・一般財団法人の設立手続きをはじめ、運営に関するアドバイスや定款作成サポートも行っております。法人設立をお考えの方は、お気軽にご相談ください。