
近年、訪日外国人観光客の増加や国内旅行の多様化により、「民泊」に注目が集まっています。空き家や空き部屋を有効活用して収益化できることから、副業や独立開業としても人気があります。しかし、民泊を始めるには法的な手続きや設備面での準備が必要です。今回は、初めて民泊経営を検討している方向けに、事前に準備しておくべきことをわかりやすくご紹介します。
民泊の種類を知る
一口に「民泊」といっても、いくつかの種類があり、それぞれに必要な手続きが異なります。
● 住宅宿泊事業(いわゆる「民泊新法」に基づく民泊)
住宅宿泊事業法に基づくもので、年間の営業日数は180日以内という制限があります。都道府県への届出制であり、比較的始めやすいのが特徴です。
● 簡易宿所営業(旅館業法に基づく営業)
年間営業日数に制限はなく、営業の自由度が高い反面、保健所の許可を得る必要があり、施設基準も民泊新法より厳しめです。複数部屋を運用したい方には向いています。
● 特区民泊(国家戦略特区内で可能)
特区に指定された地域で行う民泊で、自治体の認定が必要になります。対象地域は限られているため、まずは地域の条件を確認しましょう。詳しくはこちら
物件の選定と用途の確認
民泊に使う物件の選定は非常に重要です。以下のポイントを確認しましょう。
● 用途地域の確認
都市計画法により、用途地域によっては宿泊施設の営業が制限されている場合があります。事前に自治体の都市計画課などに問い合わせて確認しましょう。
● 建物の構造と安全性
消防法や建築基準法に適合している必要があります。特に簡易宿所営業を行う場合は、消防設備の設置や避難経路の確保などが必須です。
● 賃貸物件の場合はオーナーの許可が必要
賃貸物件を使う場合、オーナー(貸主)の許可がなければ民泊運営はできません。無断で営業すると契約違反になる可能性があります。
必要な届出・許可を取得する
民泊を始めるには、必ず所定の手続きが必要です。無許可営業は違法となり、罰則の対象になります。
● 住宅宿泊事業(民泊新法)の場合
都道府県または指定都市への届出が必要です。主な提出書類には以下のようなものがあります:
- 住宅宿泊事業届出書
- 建物の図面
- 近隣住民への周知報告書
- 欠格事由に該当しない旨の誓約書
● 簡易宿所営業の場合
保健所への営業許可申請が必要です。提出書類のほか、現地の立入検査が行われ、消防法令適合通知書なども求められます。
消防・衛生設備の整備
民泊は宿泊者の安全・衛生を確保する必要があります。特に簡易宿所営業では、消防署の確認が重要です。
● 消防設備
- 自動火災報知設備
- 誘導灯
- 消火器
- 避難経路の表示
● 衛生設備
- 清潔な寝具やタオルの提供
- トイレや浴室の衛生管理
- ゴミの分別・廃棄体制の整備
運営体制の整備
民泊は「始めること」よりも「継続的に運営すること」が大切です。以下のような運営体制を整えておくと安心です。
● 管理業務の分担
住宅宿泊事業では「住宅宿泊管理業者」に管理を委託するか、届出者本人が自ら管理する必要があります。遠方に住んでいる場合は委託を検討しましょう。
● チェックイン・チェックアウト体制
宿泊者と直接対面する場合もありますし、非対面(スマートロック等)での対応も可能です。どちらにするかあらかじめ決めておきましょう。
● クレーム対応・トラブル対策
近隣トラブル、宿泊者とのトラブルなどに備えた対応マニュアルを用意しておくと安心です。
集客と運営開始後のフォロー
民泊の経営は「お客様を呼ぶ工夫」が成功の鍵です。主な集客方法は以下のとおりです。
- AirbnbやBooking.comなどのOTA(オンライン宿泊予約サイト)に掲載
- 自社サイトやSNSによる情報発信
- 写真やレビューの充実化による訴求力アップ
また、宿泊後のレビュー対応や定期的な清掃・設備点検も忘れずに行いましょう。
まとめ
民泊経営は比較的始めやすく、柔軟なスタイルで収益化が可能ですが、法律に基づいた手続きや安全面への配慮が不可欠です。準備段階でしっかりと計画を立てることで、安心・安全な民泊運営を実現できます。もし手続きや届出に不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談するのも一つの手です。民泊経営をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。